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聖剣の勇者7



 あの後、髪を濃い緑色に変えたミアも連れて一旦町に戻った。黒髪=魔族のイメージはまだまだ根強いからだ。しかし数百年前と比べると、召喚勇者の中に黒髪の者も多く居た事が起因してか、黒髪の人間も増えては来ているが念には念を入れておく。


 イチャつきながら歩く二人は周りの視線も気にせずにギルドへと一直線に入っていった。ゴブリン討伐の報告をする為だ。その後を追うようにしてラルフとギルドへ入る。

 

「ゴブリンキングが巣の奥に居た。証拠の魔石も提出したい」

「は、はぁ。かしこまりました。鑑定致しますので少々お待ち下さい」


 人気者のエリオットの腕にピッタリとくっついているミアが気になるのか、チラチラと視線をやりながら受け付け嬢はそう言い残し、魔石を手に奥へと入っていった。お仕事中のキリッとした顔も素敵とはミアの談だ。さっきくっついたばかりとは思えないほど周りにハートが飛んでいる。


 魔石とは大なり小なり魔物が持つ物で、強さに比例してその大きさを変える。ゴブリンキング等の大物になるほどに大きい魔石が手に入る、という事だ。通常のゴブリンの魔石が大量に入った袋も忘れていたのか、後からカウンターの上にドサッと置いた音がした。


 報酬を貰い外に出ると、レイラが駆け寄ってきた。店番はどうしたと思ったが、もうエリオットしか目に入ってなさそうな態度に察した。正確には腕にひっついているミアも視界に入れているが、一睨みして無視している、という状況だ。


「エリオット!大丈夫?怪我してない?」

「そんなに心配しなくても大丈夫だって。大げさだなぁ」

「でも今日の依頼はとても強い魔物がいるって噂になっていたの。だから心配で」

ギルドの奴等(アイツ等)一般人にそんな事漏らすなよなぁ」

「ううん、私が悪いの。ちょっと小耳に挟んで、そこからギルドの人達に教えてってお願いしたの」

「はぁ……」


 ギルドにはある程度の規約はあり、しかし依頼内容に関しての厳密な守秘義務はなく、そこに罰金など設けられていないため、人から人へ話が広がってしまうようだ。ギルド登録の際に聞いた簡単な説明では言われなかったので、そういう事なのだろう。もちろん、私が到底受けられないような依頼は内密にしているとかはあるとは思う。


「それでその……エリオットの横にいる女性は?」

「はじめまして。ミアと申します。エリオットの恋人ですわ」

「え……」


 サァっとレイラの顔が青くなる。それもそうかと思う。幼馴染で、少し話した私ですら牽制し、女を近づけさせないようにしていたのだ。ぽっとでの何処の馬の骨ともわからない女に掻っ攫われたのどからレイラとしてはたまったものではないだろう。レイラが少し後ずさりをしたジャリっという音が聞こえた。うつむき、涙目になっている。なまじ美少女なせいでこちらの方が悪い事をしている気分になるが、当の二人は見つめ合って二人の空間を作っていた。


 第三者の方が気まずいというのもなんだかな、と思いラルフに目配せした。ラルフも困った表情で微笑んでいるだけだが。


「そ……そうなの。えぇ……私、用事を思い出したので……エリオット、また、ね」


 そう言うとレイラは駆け足で店の方へ戻っていった。


「レイラ、どうしたんだ?」


 本当にわかっていなさそうな顔で、エリオットが呟く。あんだけ好意を顕にしているのに、なんとも鈍い事だ。


「あの方とは親しいんですの?」

「うーん。まぁ幼馴染ではある。妹みたいな感じで、昔からよく懐いてくれてたんだ」

「まぁ……」


 仲良くしたいですわね、とミアは言うが目の奥は笑っていないので本音は違う所にありそうだった。女の戦いって怖いのよね。意中の相手には悪く見られたくないという人が大半だと思ので、仕方がない事ではあるが。


 その日は解散、となったのだがミアがエリオットと離れたく無いと一悶着あった。エリオットは家族と暮らしているため、急に押しかけても印象良くないよ、と言ったら諦めてくれたが(エリオットは乗り気だったと追記しておく)


 宿へ戻り二人部屋に変えて貰い人心地つく。なんだかんだ緊張が続いていたからベッドがとてもありがたい。ミアは一度自分に当てられた部屋を見てから、事前にこちらの部屋へ呼んでおいたのですぐに来た。ベッドから起き上がり、ぐでーっと伸びをした後、ミアへ顔を向けた。


「で?」

「で?とはどういうことですの」

「なんであんな所居たのって事!」

「うっ……やっぱり気になりますわよね」


 あったりまえでしょ!と言い、ベッドに座りミアへと身体を向ける。ミアもこちらへ身体を向き直した。片方の指で髪の毛をくるくると巻きながらバツが悪そうにぼそぼそと話始めた。


「10年前飛び出したは良いものの、上手くいかなかったんですの。私みたいな吸血鬼系は血を吸わなければならないでしょう?森とかで魔物の血をちょーっといただいて生活していましたの。そうしてフラフラしていたらうっかり封印されてしまって」


 まさか聖剣を使って封印されてしまうなんてと、ふぅっと物憂げに息を吐くミア。ミアもそこそこ強いので、それでしか封印できなかったのだろうと想像がついた。町で情報が入らなかったのは隠蔽してあまり人が近づかないようにしていたのだろう。


 従姉妹は吸血鬼系の一族で、代々伴侶から血を分けて貰いながら生きて来た。大半が同じ魔族を伴侶とするので、ミアみたいな人間が良い!というタイプはあまりいない。


「あの当時魔族から求婚されてなかったっけ?」

「あのチャラチャラしたエルフのことですわね。あの方、全然好みじゃないのに、付きまとわれてホントに大変だったんですわ」


 その点、エリオットは鍛えた身体にあのキラキラとした髪の色……とつらつらと惚気が始まったので聞き流す。

 もうノエルなんてとっくに夢の中だ。お風呂にも行きたいのに、いつ話が終わるのか途方に暮れた。




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