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恋愛イロモノ短編

ニチアサ転生の憂鬱〜念願の日曜朝変身女子アニメキャラになって愛する推しの悪役にも絡めたけど早くも追放の危機です

作者: 大海烏

「……えっ真紅(しんく)さん、今なんと?」

「聞こえなかったか、ピュアサファイア。

 じゃあもう一度言うけど」


 赤木(あかぎ)真紅、いや赤の衣装に身を包んだ短髪の少女がわざわざ本名でなく「ヒメピュア名」で青の衣装、ピュアサファイアにそう告げる。

  

「サファイア、キミにはヒメピュアを辞めて欲しい」


 彼女は口調こそ静かだが、その表情は明らかに不機嫌そうであった。

 

「うん、これは決定事項。」

「ごめんね。

 シンちゃんやキーちゃん、そしてスイの3人で決めた事なの」


 そして赤衣装の女子(シンちゃん)に続いて、黄色(キーちゃん)と緑の衣装の少女(スイ)もそう口を開く。

 

紀伊路(きいろ)さん、翠夢(すいむ)さんまで……」


 黃村(きむら) 紀伊路、ピュアトパーズ。

 緑谷(みどりや) 翠夢、ピュアエメラルド。

 彼女達と真紅、ピュアルビーが結託してサファイアをヒメピュアから追放しようとしている。

 

 どうして、こうなった。

 ピュアサファイアこと青井(あおい) (あお)は、これまでの状況を頭で反芻した。


  

 ここはニチアサ、日曜朝に放送されている人気アニメ「よにんでヒメピュア」の世界。

 ヒメピュアシリーズは20年続くニチアサの名物アニメ。そして()()青井 蒼はヒメピュアシリーズをこよなく愛する転生者であった。


 彼女が幼稚園児だった頃に初めて見たヒメピュアは大きな衝撃を与え、以来、大人になり彼女が会社の事務社員、いわゆるOLになった今でもヒメピュアを毎週欠かさず見ており、特に最新作の「よにんでヒメピュア」、略してヨメピュアの中でもクールが売りのNo.2の立ち位置にいるピュアサファイアこと蒼ちゃんがお気に入りで、いっそ彼女になりたいとまで願った。 

 そして何故かその願いは叶えられ、今はこの世界でしばらくヒメピュアとして活動してきた訳だが。


「蒼は最近、カーボンに肩入れし過ぎ。

 正直邪魔。」


 歯に衣着せぬ物言いで口を開くピュアトパーズ。

 実際彼女の言う通りで、サファイアの中の人の男子の推しは敵幹部の一人、漆黒の衣装に身を包んだカーボン。

 当然彼への攻撃など出来る訳がなく、その為敵にトドメをさせないどころか逆にサファイアが盾になって阻止して、何度も戦闘を妨害している。


「アオちゃんのクールなキャラは最近何処に行ったの、ってスイは正直思う」


 遠慮がちにそう言う、スイことピュアエメラルド。

 ヒメピュアに最後に加入した彼女は引っ込み思案の性格で、計画の立案を的確に出来るサファイアに、自分に無いものを感じ密かに憧れていた。

 しかし今のサファイアの中の人は、それまでの彼女とは真逆の性格の粗忽者。

 最初こそ体調が悪いのかとか、頭を打って一時的な記憶喪なのかとエメラルドは心配もしたようだが、敵を庇う仕草を何度も見せられれば流石に失望もするだろう。

 

「なるほど、言いたいことは分かりました」


 やけにあっさりと、サファイアが折れる。


「でも四人揃わないと使えない必殺技もありましてよ?

 それはどうするおつもりですの?」


 前言撤回。サファイアは自分の必要性を主張して追放を回避するつもりのようだ。



 一方その少し前、敵サイドでは。


「なーカーボンさんよ」

「何だよ、ゲルマニウム」


 悪の組織の幹部の一人、黒服のカーボンが同僚のゲルマニウムに声をかけられる。

 

「最近のヒメピュアは何かオカシイよな、特に青い子」

「うん?ああ」


 ゲルマニウムにそう言われたら、確かにピュアサファイアが精細を欠いているのに思い当たる。

 

「ひょっとしたらあの子、お前に惚れてんのかもよ」

「いやっそんな事はない、と思う」


 もしそうなら正直迷惑である、とカーボンは思った。

 

「仮にそうだとしたら、チャンスよねぇ」


 横から口を挟む、もう一人の悪の組織の幹部。

 

「チャンス?

 どういう事だ、シリコン」

「やーねぇ、全くこの朴念仁ったら」


 ちなみにこのシリコン、口調こそ女のそれだが♂である。

  

「彼女を懐柔しちゃえばぁ、ヒメピュアも瓦解するだろうって話」

「サファイアをナンパしろと?

 オレはそう言う柄じゃない」

「そう言うだろうと思ったわぁん。

 だったら、プランBがあるのよねぇん」

「プラン、Bだと?」


 さて先程のエメラルド追放に話は戻る。


「ふっ、流石はヒメピュアの頭脳担当。

 色ボケしててもその辺の頭は回るようだね」


 皮肉たっぷりの口調でルビーが言う。


「だが心配無用さ、キミの後釜はちゃんと見つけてある。」


「ど、どうもはじめまして黒井(くろい) 陀嫌(ダイヤ)と申します」


 サファイアはその正体を一目で見破った。

 これ、女装したカーボンだ。


 元が美少年だけあってギリギリ女性には見えなくもないが、逆に何で皆気づかないのだろうと首を捻る変装レベルであった。

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