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ほんのり不穏

 エルナを弟子にして半年が経過した。その間に進展したものは私とエルナの親密度ぐらいのものであり、特に目覚ましい何かがあったわけではなかった。一方エルナの方はそれだけではなく、中級までの聖術を覚え、この街の要である冒険者ギルドにも顔見知りができたらしい。


 冒険者というのはこの街においてとても重要な存在だ。この街のような魔物の領域と接している辺境だと魔物による被害が内地よりはるかに多い。そんな魔物たちを衛兵たちなどで対処しようとなると当然のように手が足りなくなってくる。そんなときに頼れるのが冒険者だ。


 町の安全は守られ、学がなくても実力さえあれば金を稼ぐことができる。冒険者というシステムは辺境の町にとって必要不可欠なものだ。


 そんな冒険者のたまり場である冒険者ギルドに顔見知りがいるということは将来は最悪冒険者にでもなれば暮らしていけるということだ。




 「師匠!あの小説の新刊買ってきました!」


 この半年で私に対する理解度が飛躍的に上昇したエルナが私お気に入りの娯楽小説を買ってくる。素晴らしい。 


 「素晴らしいよ。さすがだねエルナ。ところで今日の教会のの掃除をやってほしいんだけど」


 「それならもうやっておきました!ですが師匠、たまにはご自分でやった方がいいのでは?」


 正論……それは私が他人に言われたくない言葉の一つだ。


 「いいかいエルナ。君は私から聖術を習っている。そうだね?本来聖術とはお金を払って教えてもらうようなものなんだ。それを君は無料で習っているわけだから相応の労働で返すのが筋だとは思わないか?むしろ労働の場まで提供してる私に感謝すべきではないかな?」


 「た……確かに。ありがとうございます!師匠」


 ちょろ……素直な子だな。頭をなでておこう。


 「えへへ……」


 エルナが嬉しそうに顔を緩ませる。


 「そういえば師匠、最近魔物が活性化してるって冒険者の人が言っていたんですけど、治療の手が少し足りないらしく聖術を使える人が必要らしいんです。後で行ってきていいですか?」


 「ああもちろんだよ。ついでにこの教会の宣伝も忘れるんじゃないよ?」


 「はい!」


 そう言って駆けていくエルナを見送りながら私はエルナの先ほどの発言について考える。


 「にしても、魔物の活性化……このタイミングで?」


 半年前に魔王討伐のために勇者パーティが編成されたのだから本来魔物たちは防衛のために魔物の領域の奥に引っ込むことはあっても数が増えたり活性化したりはしないはずなのだが……。


 まあここは冒険者が多いし、そのうちどうにかなるだろう。

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