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エルナ


 「助けていただいてありがとうございますッ!」


 助けた少女がそう言って感謝してくるが、私はそれよりも聞かなければいけないことがある。そのため努めて柔和で穏やかでまるで聖女のような笑みを浮かべながら問いかける。


 「どういたしまして。ところでお嬢ちゃん。家族はいたりするかな。」


 「……ひぇ」


 ん?どうかしたのだろうか。少女が固まってしまった。まぁいいか。質問を続けよう。


 「親御さんとか、兄弟とかはいないの?」


 そう問いかけると、少し考えるそぶりをした後少女は恐る恐るといった様子で


 「家族は……いません……」


 と答えた。

 

 家族がいないのだったらしょうがない。優しい私は住むところと働くところを提供してあげようじゃないか。


 「私は今教会に住んでいるんだけど、人手が足りなくてね。君さえよければ教会でシスター見習いとして働いてみる気はないかい?」


 「……!!いいんですか……?」


 「うんうん。私は君のような人材を待っていたんだよ。さあ、おいで。一緒に頑張ろうじゃないか!あ、そういえば自己紹介がまだだったね。私はリリー。バレバン・リリーだよ。」


 「は、はい!私はエルナといいます」


 「いい名前だ。よろしく、エルナ」





 ※



 エルナはもともと貧民街で生まれたのではなかった。父はいないが母がおり、裕福ではないが決して貧しくない家庭で幸せに暮らしていた。

 ───8歳までは。


 母が流行り病にかかってしまい、運悪くそれをこじらせて病死。他に身寄りもないので貧民街に行くほかなかった。よくあるわけではないが、ないわけでもない。そんな別段珍しいわけでもない事だ。


 その日もエルナはいつものように食べ物を探し貧民街をさまよっていた。いつもと違うのは見知らぬ男二人組に絡まれてしまったこと。




 「あ、あの……なん…ですか?」


 目の前には男二人。どちらも知らない顔で、体を恐怖が支配する。怖い。私はこれからどうなっちゃうのかな。


 そんな時、近くを教会のシスターのような服装のきれいな人が通りかかった。その人は一度こちらを振り返ったが、また向き直り歩いて行ってしまおうとする。


 「待ってください!シスターさん!!助けてください!!」


 思わず抱き着いちゃった。藁にもつかむ思いってやつだ。つかんだのはシスターさんだけど。


 シスターさんは少し考えるそぶりをしている。どうしよう、助けてくれないのかもしれない。そうだよね、相手は大人の男の人二人だし。


 そんな風に考え、これ以上迷惑をかけないように手を放そうとしたとき、そのお姉さんが男たちを煽りだし、あっという間に倒してしまった。それも殴ったり蹴ったりして。最近のシスターさんは強くてすごいなぁ、なんて考えていたらシスターさんがすごく不気味な、ニコォとした笑顔を浮かべて問いかけてくる。


 「お嬢ちゃん。家族はいたりするのかな?」


 思わず悲鳴を上げてしまった。どうしよう。もしかしてこのお姉さんも悪い人なのかな。そんなことを考えている間にもお姉さんはさらに問いかけてくる。


 いや、このお姉さんは私を助けてくれたし、私は覚悟を決めて正直に答ることにした。


 「家族は……いません……」


 そう答えるとシスターさん───リリーさんは私、エルナを教会に連れて行ってくれたのだ。

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