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全力の抵抗


 世の中の人間は平等ではない。何故ならば人には才能という格差があるからだ。そして客観的に見ても、自己評価としても、私にはそれがある方だろう。ちなみに今目の前で私に指示を出してる大司教サマもまぁ優秀な方だが、私ほどではない。そんな立場が上なだけの男が机を挟んで私の前の椅子に座っており、今私に命令を下している。


 「聖女バレバン・リリーよ、そなたにペノム村での勤務を命じる。この村の教会にはもう話を通してあるから、その力で民たちを導いてくるのだ。」


 ふむ、ペノム村というとこの国の東の果てにある村で、今リリーがいる王都からはもちろん遠い。そしてもちろんそんなところへは行きたくない。これは私でなくてもそうだろう。


 ──だがしかし!私にはこれを回避する複数の手札がある。さあ刮目するがいい大司教サマよ。


 「すみません大司教。私は王都にある大女神像の管理をしなければならないので、あまり長く王都を離れるわけにはいかないのです……」


 「いや、それなら別の大司教に任せるので問題はない。もとより聖女にやらせるものでもなかったしな。」


 ───ふむ。なるほど?さすがは大司教といったところか。なかなか手ごわいではないか。


 「辺境での支持の向上ということでしたら、私よりも他の聖女のほうがよいのでは?」


 「神光(しんこう)の聖女様は今別件で王都から離れているし、華炎(かえん)の聖女様は先日勇者パーティの一員として魔王討伐の任務を始めた。今王都には聖女はお前しかおらんのだ。そして辺境は最も魔物が多い。聖女が行った方ができることも多いだろう。」


 なるほど……魔王討伐ね。そういえばまだそんなのやってたんだったか。

 

 まずい。非常にまずいぞ。何がまずいってぐうの音も出ないことだ。どうやらこのまま反抗しても勝ち目は薄いようだ。

 しかし、私にはまだ…まだ手札がある。この手は使いたくなかったのだが……致し方ない。

 そう決めた瞬間私は動き出した。人並み以上には整った顔でなるべく媚びるような顔をつくり、甘い声を出したいな、という願望を胸に、10代後半にしてはいささか成長の足りない胸は……使えないか、まぁとりあえず、媚びてみた。全力で。


 「大司教ぉさまぁ…行きたくないですぅ」


 「聖女リリーよ、顔が引きつっているぞ。あとその変なしゃべり方は何だ。」


 くそッ…!なれないことをした弊害が出た!!これでは恥をかいただけではないか。いやだがまだ私には作戦が────

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