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赤い苺と青いキャンディー

夜の帳が下りた。


地下室の天井には小さな明かり取りの小窓が一つ。


部屋の中に月明かりが差し込んでくる。


部屋の中には古いベッドと椅子とテーブル、部屋の隅にバケツが一つ。


テーブルの上には硬いパンと水と古びたランプ。


僕は殺されるのか?どこかに捨てられるのか?


もしかして、このままずっと放っておかれるのか…


「母さん、助けて…」


三日前、母さんは森へ出かけた。


いつもより大きな籠を持ち、楽しげに歌を口ずさみながら。


「森で苺を摘んでジャムにしましょう

危ない森へは誰も入らない

森で苺を摘めるのは私だけ

昔々、愛する人とは森で出会った

たくさん、たくさん苺を摘んで

赤い赤い、真っ赤なジャムをつくりましょう」


それ以来、母さんは帰って来ない。


外から草を踏む音が聞こえる。


サクサク、サクサク…誰か来る。


足音は小窓の前で止まった。


誰かが小窓から飴玉を一つ投げ入れた。


今まで見たことがない綺麗な空色の包み紙に包まれたキャンディー。


「明日すべてが変わる。明日、あなたは自由。」


それは、僕の知らない子供の声だった。


聞いたことが無い発音の不思議な話し方。


「君は誰?どういうこと?僕はどうなるの?」


「私の髪も青い。」


それだけ言うとその子はどこかへ行ってしまった。


僕は悲しくなって泣きながらキャンディーを食べた。


初めて食べるキャンディーはガラスみたいに透明で青く、信じられないくらい甘く口の中でシュワシュワと溶けた。


これは、多分、僕の知らない世界の欠片かもしれない。


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