昨日までの幸せな世界さようなら。今日からの残酷な世界こんにちは。
これは、僕の物語であり君の物語。
生まれた世界が違っていても君と僕は友達になれるかもしれないって思う。
ある晴れた日、風が吹いた。
そして、僕の世界は死んだ。
校庭の木々がざわめいて葉っぱの隙間からキラキラした銀色の夏の光が無数にもれている。
僕の帽子がヒラヒラとまるで鳥のように青い空に舞っている。多分、もう僕の頭の上には戻ってこない。
僕の髪が、風に揺れている。この街に来て以来、初めてお日様に見せる僕の青い髪。
さようなら今までの僕。こんにちは独りぼっちの僕。
お日様みたいなオレンジ色の髪をした友達はみんな遊びをやめた。
僕をじっと見つめて身じろぎもしない。
僕の世界の時間が止まった。
大人達が向こうからやってくる。
校長先生の大きな手が僕の頭を鷲掴みにした。
「なんだ、この髪の色は。見たことがない。恥知らずな。早く髪をかくせ。大変な事になる。」
校長先生は、僕の頭に自分の上着をかぶせて校舎に引っ張っていった。
そして、僕を学校の地下室に閉じ込めた。
これから、僕はどうなるんだろう。
不安で胸が押しつぶされそうになる。
昔まだ僕が小さかった頃、僕とお母さんはこの街に引っ越してきた。どこから来たかは覚えていない。
その時お母さんが言った。
「いいかい。よくお聞き。これからは出かける時には必ず帽子をかぶるんだよ。髪を見せちゃいけないよ。もし見られたら、きっと酷い目にあうから。」
本当は、なんでこんな変な帽子を被らなちゃいけないか理解できなかったけど、その時はお母さんの悲しそうな目を見て「どうして?」を飲み込んだ。
お母さんは言葉を続けた。
「あなたの青い髪はお守りなんだよ。
お父さんと同じ色でお母さんが大好きな色。
他の人が何て思うかなんて関係ない。お母さんは、あなたが大好きよ。」
それ以来、僕はお母さんの言いつけを守って帽子をかぶり続けた。この街の人々の多くは普段からよく帽子を被っている。
帽子を被った僕は、オレンジ色の髪の友達や先生、近所の人達と仲良くなった。
この街の人々はみんな同じ白い服を着ている。
シャツもズボンもスカートも上着もドレスも。
ペットの服まで真っ白だ。街の中の建物も白い色か灰色をしている。壁もドアも屋根も真っ白。
むろん、古い建物はすすけて灰色だったり汚れて茶色になっていた。
誰かが言った。
「あー、家も服装も街中の人と同じで安心するよ。競い合う事もない。これこそ平等だよ。」
また、ある人は、
「自分と同じ人達に囲まれて、なんて幸せなんでしょう。皆、同じ美しいオレンジ色の髪に清潔な白い服。私達の心は一つ。考え方もきっと同じだからお互いのことを思いやって仲良くできるわ。」