第四十三回
即興詩~血ヘド
俺は独りだ
母親に殴られて育った
今まさに独りであるという重苦しい事実に加えて
過去においてもずっと独りで生きて来た
これからも独りだ
そしてその孤独で過酷な人生を
支えてくれる温かな思い出というものも
俺の心には存在しない
ひとかけらも
存在しない
家での思い出といえば
殴られたこと
けなされたこと
冷たく突き放されたこと
そういった思い出
いや思い出とすら呼べない
そういった記憶のかけらたちが
今でもこの乾ききった心に刺さっている
この心は血を流しているのか
否
なにものもこの心をうるおしはしない
どこまでも乾いている
どこまでも渇いている
この孤独を
この苦痛を
俺は無人の荒野に叫ぶ
どれだけ叫んでも軽くはならない
ただあらためて
俺は思い知らされる
この人生という荒野の中で
俺はどこまでも独りだと
おまけの詩~イノベーション
荒れた学校
荒れた家庭
人手の足りない介護現場
人は育たないし
産業はすたれる
なにがうまくいっていないのか
いや
逆に聞きたい
この国で
うまくいっていることはあるのか
誰もが口をつぐむ問いかけだ
ただひとつ
わかっていることがある
この国でイノベーションが起きているのは
犯罪の手口だけだ
連中がいちばん知恵を絞っている
おかしいだろ
他人の血と汗と涙をすすって
食べる飯はそんなにうまいのだろうか
人も金もどんどん集まる
金ぴかの虚像
亡者たちの行進
鳴りやまない怨嗟の声
経済大国のなれの果て




