第三十八回
檻の中の哲人
なんの間違いかわからないが
檻の中に
一人
哲人が閉じ込められている
檻の中の哲人
彼のまわりを
ハイエナが
ライオンが
うろつきまわる
ハイエナが
ライオンが
吠えかかる
彼は一人 思索にふける
彼は一人 もの思いにふける
なぜ彼はこのようにして
一人異質な存在として
獣たちと同じ檻の中にいるのか
答えは出ない
彼がもの思いに沈むほど
彼がその縦じわを深く刻むほど
ハイエナは
ライオンは
その凶暴さの度を増すようだ
その不機嫌さの度を増して
檻の中の哲人を威嚇する
場違いだ
消え失せろ
ハイエナが
ライオンが
威嚇する
有象無象の肉食獣が
ただ一人もの思いにふける
哲人であるところの彼を
牙をむいて
威嚇する
檻の中の哲人
思索する彫像
どこまでも
どこまでも
場違いな姿で
宿命と業を背負いし者よ
宿命と業を背負いし者よ
お前は生まれた瞬間
「孤独!」
と叫んだ
お前の生きる道の名は孤独
お前の魂の名前も孤独だ
絶対的孤独
それがお前の本質なのだ
お前は宿命と業を背負って
生まれて来た
宿命と業を背負いし者よ
生まれながらの罪人よ
孤独はお前に課された
終生の罰だ
お前は希望を抱くことを許されていないが
かといって絶望に倒れることも許されていない
ただひたすら孤独にさいなまれながら歩き続けることが
お前に課された厳しい罰だ
宿命と業を背負いし者よ
孤独の荒野を歩き続けろ
詩作
その瞬間
またひとつ成し遂げたという思いと
また少なからぬ時間を無駄にしたという後悔の念とが
ないまぜになる
そこには
厳密な意味での達成感はない
虚無感?
徒労感?
あるいはそれは
友人のバターが溶けていくのを
なすすべもなく眺める
マーガリンの無力感にも似た
空なる感情
そう言い表すのが妥当かもしれない
大いなる超自然の力が
俺の肉体を
精神を
魂を通して
何かを叫ばせる
ひどく疲れる営み
俺はくたくたになる
俺はぬけがらになる
もうやめてくれ!
俺を解放しろ!
その叫びさえもが
ああ
また
詩になる
俺を疲労させる
決してやむことのない
超自然の働き
無限に続く
不随意運動




