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転生使徒の寮長生活

『皆さんを向こう側の世界に転移させます。それではご武運をお祈りしています』


俗に言うクラス転移という状況の中、その言葉と同時に周りにいたクラスメイトたちが次々と異世界に転移していく。

それによって残っている人数は一人、二人、三人とどんどん減っていき、気が付けばオレを除き残り一人となっていた。


その最後の一人もしてしまい、次はオレの番かと目を瞑る。向こうは中世レベルの文明の剣と魔法の世界っていっていたし、多分、次に目を開けたらどこかの王国の王宮にでもいるのだろうな。

そんなことを思っていると転移していったクラスメイトのみんなと同じように足元から光が上がってきて、一瞬体を浮遊感を襲う。


そして、瞑っていた目を開くと…



……………えっ?



『えっ?貴方なんで残ってるの?』

「…いや、それはオレが聞きたいんだけど」


オレは転移せず、目の前の風景はもともとの白い部屋から一切変化していなかった。

これには女神様も困惑したようで、半ば反射なのだろう速度でオレに答えられる筈もない…というか、むしろオレが知りたい疑問を向けて来た。


『そうよね、そんなの当たり前だよね。普通の高校生なんだから、私が分からないなら分からなくて当たり前だよね』

「うわっ、なんか急に神聖さが薄れてる」

『知らないわよっ!こんなトラブル今までなかったんだから、ちょっと調べるからそこで待っててね』


さっきまでは物凄く女神然としていた筈なのに、今ではその仮面は剥がれてしまっている。

なんだかもう、最初の神聖さが夢だったみたいだ。


『…ふむ、なるほどね。(『異能無効』スキル、なるほどね。こっちに来るときにこんなスキルを得ちゃったのか。それじゃあ、ただの召喚魔法ならともかく、異世界召喚できるわけないわよね、納得だわ)』

「何か分かったんですか?」

『そうね、まあ、貴方を調べればすぐに分かったわ。貴方、異世界転移の魔法に巻き込まれたときに『異能無効』のスキルを習得しちゃったみたいね。異世界からの召喚は半ば異能みたいな技だから、きっとそれが反応して転移出来なかったんでしょうね』


なるほど、つまりはオレが『異能無効』なんてスキルを得たのが原因、と。

えぇ、それオレが防ぐのは無理なんじゃないか?


『ただそうなると困ったわね。貴方、そのままじゃ戻ることも向こうに行くことは出来ないわ』

「そういえば、異世界への転移は異能みたいなこと言ったましたね」

『というわけで、貴方には転生するか私の使徒になるか選んで貰います。転生するなら『異能無効』が外れるから向こう側の世界にそのまま送り出すし、使徒になるなら私の為に馬車馬の如く働いて貰うわ。その代わり、貴方が元居た世界の中でも結構高いレベルの衣食住は保証するわよ』


要するにロマンか実利か選べってところだな。

さらに言えば中世の時代で自由を謳歌するか、近代レベルの生活で堅実に働くかと言った話でもあるな。


…なんというか、こんなの一択しかないよな。


「じゃあ使徒で、現代日本で育ったオレに中世レベルの世界は我慢できないと思います」

『分かったわ、じゃあぱぱっと使徒にしちゃうわよ。一応確認しとくけど、私が女神だから貴方女の子になっちゃうけどいいのよね?』

「えっ、そうなんですか?…まあ、良いですけど、それなら美少女にして下さいね」

『ああ、それなら安心して良いわ。私の眷族になるんだから勝手に美少女になるわよ』

「そうですか、ならよろしくお願いします」


というわけでオレは、特に迷うこともなく安定した衣食住…実利を選択した。






「…ん」


どうやら、使徒化の過程で眠ってしまっていたらしいオレは目を覚ました。


「あら、やっと起きたのね。なかなか目覚めないから少し心配してたのよ?」

「…誰?」

「わたしは女神様の使徒の一人、名前は…うふふ、今は秘密よ。そうね、適当に貴方のお世話を任された謎のお姉さんとでも思っておいて?」


そういうと、謎のお姉さんと自称するスレンダーな体形だった女神様とは真逆のグラマラスな体付きの女性はオレが眠っていたベッドから立ち上がった。


「それじゃ、レイン君、またね。あ、女神様から伝言、この部屋と外の部屋は貴方の管轄だから自由に使ってだってさ〜」

「あ、はい」


そうして、謎のお姉さんはオレ…白亜(ハクア)礼音(レイン)にいくつかの謎を残して出て行った。




「…そういえば性別が変わったんだったな」


ベッドから上体を上げると女神様と同色の純白の髪が前に流れてきて、性別が変わったことに思い至る。

姿がどんなふうに変わったのか気になってベッドから降りて鏡を探せば、


「これ、オレだけで使うのか?」


ベッドのある部屋を出た先に、一人で使うには明らかに過剰な部屋が目に入った。これくらいの広さがあれば、五世帯くらいなら余裕を持って生活出来そうだ。


さらにそうやって半ば呆然としながら視線を部屋に巡らせていけば、二階へと続く階段が目に入った。

良く見てみれば二階は吹き抜けになっていて、視線を少し上に向ければ落下防止用の手摺りとその先に続く余裕で生活出来そうな広さの廊下となにかの部屋に通じている様子の扉が見えた。


ガチャン


オレは元の部屋に引っ込んだ。


「いや、さすがに広過ぎだろ。この部屋だけでもひと一人生活するなら十分なくらい広いのに、そんなわけ…ん?これって見取り図か?」


部屋の外の広い部屋にさすがにオレ一人の部屋ということはないだろうと思いながら、部屋に戻ってくると今度は愚痴を呟いているような状態だった為、視線が下がっていてその部屋にあるテーブルに…、正確にはその上にあったこの部屋の見取り図らしきものが目に入った。


気になってそれを持ち上げると、はらりっと一枚の紙が落ちて来た。


「えーっと、なになに…」


『天使見習いたちが通う学園の寮を管理するのが貴方の最初の仕事よ。ちょくちょく他の仕事も頼むと思うから頑張ってね。

追伸、寮の見取り図に管理する範囲とこなさないといけない仕事を書いておいたから参考にして頂戴』


「あー…、そういうことか。だから異様に広かったのか」


その紙を見て納得、学園の寮だからこれだけの敷地があったんだな。

それにさっきの謎のお姉さんの言葉も分かった。


この部屋と外の部屋は貴方の管轄だからというやつ、あれはオレが仕事で管理しなければならない場所のことを言っていたんだな。

その証拠に見取り図には管理区域と書いてあり、その区域は謎のお姉さんが言った範囲と被っていた。


「それで仕事って言うのが…」


『仕事参考

・寮の掃除(光魔法でも可)

・寮生のメンタルケア

・寮内の問題解決

なお、メインの仕事は使徒としての仕事なので、基本的にこれ以外のことをする必要はありません』


「うーん、意外と少ないな。というか、この寮の管理はあくまでも使徒業のついでなんだな」


余程長期に渡ってここを離れるなら話は別だが、基本的には帰ってさえ来られれば問題なさそうな業務だ。もしかすれば、この仕事は普段の業務のついでの業務なのかもしれないし、もしくは余裕のある仕事を与えて、その余裕をオレの使徒としての修行にでもりようすればいいのかもしれない。


そうみれば、この部屋に置いてある本棚があり、そこには武術、医術、農業、魔法などの複数の指南書が並んでいる。それぞれ学んでおけば損しないというか、十分に役立つ可能性があるものばかりで、それになおかつ通常業務に含まれる問題解決やメンタルケアに力を貸してくれそうな物も多かった。




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