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9/12

未来にむけて……

 もとのすがたのリーナとルカは、アンコールにこたえて元気に歌いました。

 いつもの十八番、はずむような童謡です。

 みんなみんな、自然に体がゆれてきます。

 手拍子をうちながら、たのしく声をあわせます。

『リーナ・ルーカ』としてはさいごの、『リーナ・ルカ』としてはさいしょのステージは、みんなの拍手と合唱、涙と笑いで幕を閉じました。


 楽屋にもどれば、エレンさんがにこにこと待っていました。

「お疲れ様、ふたりとも。すごく、すてきなステージだったよ」

「ありがとうエレンさん! すっごくたのしかった!!」

「ありがとうエレンさん! ゆめみたいだったわ!!」

 ルカとリーナは、エレンさんに飛びつきます。

 エレンさんはふたりをやさしく受けとめて、頭をなでてくれました。

 そして、問いかけます。

「どういたしまして。

 ……さて、さっそくだけど、聞かせてもらおうかな。

 お父さんにはわかっていたみたいだけど、今日までリーナちゃんとルカくんは、『未来の自分』になっていた。

 未来のすがたでステージに立ってみて、どうだった?

 ルカ君の未来は、閉ざされているとおもったかな?

 リーナちゃんは、まだ歌姫をやめたい?」

「ううん、ちっとも!!」

 ふたりは声をそろえます。


 ルカはぐーんと両手を広げます。

「ボクね、おっきくなりたい!

 自分のままで。あんなすてきなおとなになりたい。

 ラートさま、ううん、お父さんみたいな、すっごくかっこいい歌い手に!」


「わたしも、あんなすてきな歌姫になれるなら、歌姫引退なんかやめちゃうわ!

 そしていつかきっと、大人っぽい恋の歌がホントに似合う、ほんものの大人になるの。

 未来のわたしったら、むかしのお母さんそっくりだもの。

 お母さんもきっと、よろこんでくれるとおもう!」


 そう答えるふたりの声は力強く、もう、ちょっぴりだけど大人です。

 それをきいてエレンさんは、うん、と満足そうにうなずきました。


 * * * * *


 さて、これでとりあえず、こまりごとは解決です。

 リオンとバートは、キャラバンのみんなに惜しまれながら出発します。


「リオンおにいちゃん、バートおにいちゃん。どうせならいっしょにくればいいのに!」

「そうよそうよ。何かあったとき、つよいひとがいてくれるとたすかるわ!」

「それにとってもカッコイイしね!」

「そーそ。ほんっとかっこよくて、毎日目の保養だったわ~」

「そ、そうか? じゃあ俺、のこっちゃおっかなー」

「ああ、リオンさまがね。バートは可愛いの方だから!」

「ええええ!!」


 この短い間に、いろいろとありました。

 リオンが実は音痴だったとわかったり、バートはうまーくお化粧すればドレスも似合うと判明したり。

 いじられる本人たちはいい災難でしたが、それでも付き合ってくれる優しさに、なれない姿でがんばるリーナとルカ、そしてキャラバンのみんなが大いに助けられていたのは事実です。

 リオンとバートにとっても、家族のように接してくれるキャラバンの人たちとの生活は、やはりとても楽しく、新鮮なものでした。


 またご縁があったらご一緒しましょう。そう約束しあって、彼らは道を分かつのでした。

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