バートとリオンの「みらいよそうず」(1)
一方こちらは、リオンとバート。
てくてくと街道を歩きながら、リオンはバートにといかけます。
「よかったのかバート、のこらなくって?
今ならまにあうぞ。好きなんだろう、リーナちゃんのことが」
「えっ?!」
「見ていればわかるさ。
何かっていうと、リーナちゃんをじーっと見つめて。
俺はお前が、そのうち町の衛兵さんにあやしまれて、連れていかれるんじゃないかとひやひやしっぱなしだったぞ」
「……いっ、いや、そんなじゃないんだぞ。俺はただ、……」
「わかってるさ。
ルカくんと体を入れかえたときにはルカくんの方をひたすら目で追ってたし、お前はほんとうに、リーナちゃんのことが好きなんだってな」
そういうと、バートは“びみょう”なかおになりました。
「……うん、お前に悪気はないんだよな。わかってる。わかってる。
たしかに俺は、リーナちゃんがすてきだって思ったよ。
でもな。今の俺とじゃつりあわないだろ。
年の差があるのはいいとしても、リーナちゃんはまだまだ子供だ。
それに俺は、ただのしがない冒険者。くにいちばんの歌姫さまを幸せにしてやるには、何もかもがたりねえよ」
「そんなことは……」
リオンは、言葉につまりました。
リオンにとってバートは、だれより信頼できる男です。
でも、他の人にとってはどうでしょう。
リオンといえば、もと王子。大体の人が知っています。
けれどバートは『もと王子のあいぼう』といわれてああ! とひざを打つひとがいるていどです。
いちど知り合えば、みんながいい奴と口をそろえる彼ですが、世間的にはまだまだ、何百といる冒険者のひとりなのです。
リオンとしては認めたくありませんが、それでもやはり、そうなのです。
けれど、バートはにっこり笑ってこういいます。
「だから、俺はのしあがる!
もっともっとたくさんの人を助けて、この国で、いや、世界でいちばんの冒険者になる!
そうして、おとなになったリーナちゃんを迎えにいく!
……それに今の俺には、お前もいるからな。
しっかりしてるようでいて、どーもお前は危なっかしいんだ。まずはお前を一人前にする。俺の挑戦はそっからだ! ついてこいよ、相棒!」
「はいはい、相棒。
……そうだな、せっかく兄上や父上、みんなの優しさで俺もこうしていられるんだ。
みんなが俺を冒険者にして、よかったって思ってくれるようにならなくちゃな」
リオンは、子供のころのことを思い出しました。
そして、もと王弟さまである、お父上のことを。




