第4話 Fランクの怪物㉙【骸骨視点】
「あら、二人とも死んじゃったの? 凄く意外な展開ね」
くすくすと、いばら姫ちゃんが微笑っている。
「透さんが死ぬとか、マジあり得ないんですけど……」
リリーちゃんが驚愕している。
「こいつ、ガキのくせにぶっ飛びすぎだぜマジ」
ヒコ助が動揺している。
「完全に油断したね、透さん」
ヒキガエルが、ぼんやりと呟いている。
「あの女、あの女、あの女、あの女ァァアアア……」
花子ちゃんが、怨嗟に狂っている。あの女とは、オメガのことだろう。察しはつく。
だから僕も、軽やかに二人の死体に近づいていくことにした。
「おい骸骨、てめえ何する気だ?」
ヒコ助が、慌てたように声をかけてくる。
「ん? ちょっと生き返らせるだけさ。僕の《冒涜生誕》を使ってね」
おどけたように微笑みながら、異能を発動すべく二人の亡骸に掌を向ける。
「ちょっと骸骨。それじゃ一人しか生き返らせられないでしょ。私も手伝うわ」
そう言っていばら姫ちゃんはジェネシスで具現化した”第三の腕”を伸ばし、僕の背中に当ててくる。”第三の腕”は恐ろしいことに異能化ではなく、形態化で具現化したものだ。こんな芸当は透さんはおろか《赤い羊》の誰でもできない。ジェネシスを扱う才能に関しては、いばら姫ちゃんは透さんを超えているかも……しれない。
「おっと、そうだったね。ありがとういばら姫ちゃん」
「透と百鬼零を死なせるのは勿体ない。なんだか懐かしいわね。誰かを生き返らせたい、命を救いたいだなんて思う気持ちは……。とても懐かしい」
いばら姫ちゃんが珍しくしんみりしている。
「……記憶が戻ったのかい?」
「記憶は殆ど無いわ。医者だったことは覚えてるけど。そうね、誰かを助けたいと無邪気に本気で思っていたことは確かにある。その気持ちだけは思い出した。まぁ、人の破滅が見たいという気持ちの方が強いけれど、ね。さ、行くわよ骸骨」
《多重展開》――タジュウテンカイ――
いばら姫ちゃんのパープルジェネシスが第三の腕を介して、僕の身体に流れ込んでくる。通常、一つの異能を同時に使うことはできない。だがこの異能によってその法則は無視され、一つの異能を同時に使うことが許される。異能のための異能。
僕は僕だけの異能を展開する。
《冒涜生誕》――ボウトクセイタン――
「二人にはまだまだ楽しませてもらわないと……ね」
そして骸骨こと僕は、透さんと百鬼零に魂を吹き込むことに成功した。
そう、僕は三つの異能を持つジェノサイダーだ。
一つ目は、一つの死体を完璧に操る《死姦人形》。
二つ目は、複数の死体を同時に操る《死屍累々》。
最後の三つ目は……死者の持つ”記憶”と引き替えに死者を生者として蘇生する《冒涜生誕》。
《冒涜生誕》で甦った死体は生前の記憶を思い出せなくなる代わりに、蘇生する。生まれ変わる。記憶を失った百鬼零は、《赤い羊》として覚醒するだろう……。ククッ、それはとっても面白い。
ああ……全然、まだ全然、遊び足りないんだ……。
もっともっと、もっともっと見せてよ! インモラル・エクスタシスを!
「ハハッハハハッッ、ハハハハハハハハハハハハッッッ!」
僕は笑わずにはいられなかった。
SSに到達したオメガ。SSSに拮抗した白雪セリカ。そして、死体になった百鬼零。
新しい玩具が三つもできたら、もうやることは一つしか無いよね。
「さあ、次はもっと面白いゲームをしよう!」
僕の声が高らかに響き、今回のゲームは幕を閉じた。




