第4話 Fランクの怪物㉖
俺と花子の間に立っていたのは、透だった。
俺の剣を、暗黒のジェネシスをバリア状に歪め受け止めている。
ジェネシスを身に纏い、複雑な面持ちで俺のことを見据えていた。
「どういうつもりだ、透」
「悪いが、花子の命をここで費やすのは惜しい。そして、僕自身の考えが白雪セリカと、オメガ、そして今の君を見て変わった」
「貴様……約束を違える気か?」
「僕は君たちを完全に見下していた。下等生物として、ね。だが、花子を殺す力を持つ君と、低ランクでありながら花子を追い詰めたオメガ、そして僕を殺しうる可能性を秘めた白雪セリカ……君たちを野放しには出来ない。僕は君たちを……脅威になり得る存在として評価している」
「結局殺すのかよ……? テメエはやってることが滅茶苦茶だ。殺人カリキュラムで殺人鬼を育成しておきながら、自分が殺されそうになったら中止だ? 通らねえよそんな理屈」
「そうだね、初めてだよ、自己矛盾なんかに囚われるのは……。そういう意味でも、君たちは本当に凄まじい存在だ。だから、これはちょっとした提案なんだが……」
透は一旦そこで言葉を句切り、俺に手を差し伸べた。
「僕と来い、百鬼零。君ほどバイアスを掌握できる人間は未だかつて見たことが無い。君なら、”見たことが無い景色”を理解出来る。SSSにも、間違いなく到達出来るだろう」
「断ればどうする?」
「全員この場で殺す」
「お前と友になれと?」
「その可能性があると言ったのは君だ」
「あれはSSになるための方便だ」
「それでも君は証明した。してしまった。花子を殺せる力を持っていることを」
「…………」
「…………」
お互いに、沈黙。
このままでは押し問答だ。
だが、存外魅力的な提案なのかもしれない。
この、つまらない世界を、根底から破壊し尽くすこの男が見せる景色。
それは、きっと、どこまでも――――
「先輩! そっちへ行っては駄目!」
俺が透の手を取ろうとすると、俺の手は無意識的に硬直する。透は忌々しげに目を細めると、黒きジェネシスを翼に形態変化させ、剣を握りセリカに突っ込んでいく!




