表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
86/391

第4話 Fランクの怪物⑲【百鬼結視点】

 「……自己に対する視点を四つに分類する心理学用語という認識です。自分も他人も知ってる自分、自分だけが知ってる自分、他人しか知らない自分、誰にも知らない自分。公の場と私生活で人が顔を使い分けるように、人間の多面性について言及する考え方、です」

 「そうだね。なら分かる筈だ。自己理解という言葉が、どれだけ浅慮かということを。自分が一番理解出来ていないのは、自分。僕はそう考える」

 「……」

 「僕は僕のことを、神に近い確証バイアスを持った、幼稚な子供だと思っているよ。だが所詮自己分析など、自己満足でしかないからね。アテにはならない」

 「…………」

 「オメガ。君は、虫を飼ったことはあるかい?」

 「ない、ですが……」

 「もし、虫かごで人間を飼うことが出来たら、それはとても愉快だと……そう思わないかい?」

 透が、微笑った。ゾクリと、背筋が凍る。

 「オメガ、君はまだ虫だ。早くカゴから出て、羽ばたいて欲しいと切に願うよ」

 《無限臨死》――ムゲンリンシ――

 「続きだ。設定、溺死体験」

 「く――――っっっ」

 「オメガ、僕は君が好きだよ。君なら、あるいは……SSSに到達出来るかもしれない。そう思うほどには、ね」

 「はぁ、ぁぁ……っ」

 どう、して。

 苦悶の中、透の顔と兄さんの顔がダブる。

 初めて透と会った時、私は自分の胸がときめくのを感じた。

 ――――似ている、と思ったから。

 透と、兄さんは似ている。

 誰にも理解されない孤独の中で生きている。

 誰にも共感されない虚無の中で生きている。

 透に従っている理由。それは私の中で二つある。

 一つ目は、ジェネシスを使いこなすジェノサイダーに成長し、兄さんを手に入れるため。

 二つ目は、兄さんを諦めることが出来るかを、透で試すため。兄さんにはセリカがいる。私が入り込む隙は、妹である時点で真っ当な方法では存在しないと言ってもいい。もしも、死の苦しみで諦められるのなら。あるいは、透に対して兄さんと同等の恋情を抱くことができるなら。どちらでもいい。それで兄さんは苦しまずに、幸せになれる。

 だが、透に対する朧気な恋情は殺されながらも薄れることは無い。

 けれど、兄さんに対する恋情は苛烈に増すばかりだ。

 「くる、しぃ…………」

 苦しい、苦しいよ兄さん。

 涙が、あふれてくる。

 けど、この苦しみすら愛おしいと思ってしまう私は、それほどまでに兄さんを、想って、いるのだろう……っ。

 苦しいことが、気持ち良くなってくる。

 被虐願望に目覚めた訳では無い。性的な快感はないから。

 でも、兄さんを想いながら死を体験していると、自分の想いの強さが生半可なものではないことが分かる。だって、死にながらも諦めるどころかより強く想えるなんて、そんな愛は多分この世には存在しない。所詮、この世で語られる恋や愛は、種の保存、肉欲や金銭欲に塗れた汚い打算の関係だ。

 でも、”この想い”に打算が入り込む余地は無い。それを、理解出来ただけでも、私は今誰よりも幸せなのだと、強くそう思える。

 「はぁ……苦しいよ、兄さん……っ」

 苦しいはずなのに、愛おしく私は微笑んでいた。

 「こんなに、苦しい、のにっ」

 それが――――――――

 どうにもしようがなく―――――――――

 たまらないほどに――――――――

 嬉しい――――――――

 ――――――――のだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ