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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第4話 Fランクの怪物⑭

 「セリカ、《聖女抱擁》で自らを回復しろ」

 命令を下しつつ、思考を加速させる。

 土台ある現状の手札での花子打破は不可能。

 つまり今の時点では、何を以てしても花子を殺すことはできないという解答。

 俺には自らのバイアスを外す技術がある。透のほざいていた、確証バイアスの存在はあいつに語られる前から俺も知っている。人間は自分の信じたいものしか信じない。オカルトが良い例だ。信じたい、信じたくないがハッキリ別れるからな。存在しているかいないかは、実は些細な問題なのだ。

 「で、どうするの、零?」

 花子は挑発するように小首を傾げてくる。

 「どうする……か」

 花子は俺の思考を読んでいるのだろう。

 勝率ゼロだという解答を俺が出した上で、どういう行動を選択するか。

 「ふぅ……」

 これをやるのは久しぶりだな。

 赤染アンリがやっていたのと少し似ているかもしれない。

 目を閉じ、深く深く意識を潜らせる。トランス状態に意図的に自分を陥らせる。

 話は変わるが、俺の学力はとても低い。

 何故なら、勉強しないからだ。興味が無いし、意味を感じられないから。

 だが、俺は進学校ともいわれるこの高校に入学できた。

 結と、セリカが、この高校に入りたいと言ったからだ。

 別に俺はアカデミックスマートではないから、勉強は得意では無い。

 だが、二人が行きたいといっている場所なら、俺もそこにいるべきだと、自然に思った。

 「花子を殺す。花子を殺す。花子を殺す。花子を殺す。花子を殺す。花子を殺す」

 6回、強い意志で宣告する。

 相手がSSランクであることは忘れる。

 相手が自分より強いということを忘れる。

 全ては些細な問題。

 結果を設定する。

 そして、それを達成する行動を取り続ける。

 重要なのは、その結果が達成可能な目標であるということ。

 そして、ソレが出来ると自分が信じていること。

 スペックの問題はあるだろう。ただそれ以上に最も重要なのは、自分をどれだけ信じられるかということ。

 正直なところ、俺は俺を信じていない。

 破壊衝動を持ち、犯罪者になる素質が高い自分のことなど、信じられるはずも無い。

 だが、セリカは、そして結は、俺を信じてくれる。

 俺が俺を信じられなくても、こいつらだけは俺を信じてくれる。

 だから、俺は俺を信じられなくても、俺を信じてくれるあいつらだけは信じられるのだ。

 「……花子を、殺す」

 宣告による深い深い自己暗示。

 これを、アファメーションというらしい。

 「すぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁぁ……」

 意識を深く深く研ぎ澄ませる。

 花子はこの無防備な俺を攻撃してこない。

 何故か?

 花子は同胞と信じている俺をむざむざ殺せない。

 殺したいけど殺せない。

 その矛盾すら計算済み。思考力で、俺のスペックが透に劣るとは思わない。

 何故なら、アイツはアイツ自身で、俺がSSSになる可能性を肯定したらだ。

 一瞬で疑問に対する回答が瞬時に算出される。これはアカデミックスマートには無い知力だろうなぁ、と思う。

 俺に行動を予測されている時点で、アドバンテージは俺にある。

 「結、セリカの護衛を頼んだ」

 「に、兄さん……っ?」

 「花子は、俺がやる」

 自らのジェネシスがあふれ出すのを感じる。

 だがやはり、ランクまでは変わらない、か。

 Sランクのまま。スカーレットのままだ。だが、不思議と、負ける気がしない。

 「……凄い、わね。ここまでの力の差を見せられても、それでもまだアンタは諦めてない」

 花子は純粋に俺の闘志に驚愕している。

 「ダブルバインド如きで、人間の思考を支配できると思ってんじゃねえよ、雑魚」

 俺は敢えて花子ではなく、背後の透に視線を向け、嘲笑する。

 「キルキルキルル」

 殺す。花子を殺したあと、確実に透もコロシテヤル。

 無限の集中力で極限まで研ぎ澄まされた俺の力を、見せてやるよ……。

 花子だけに意識を研ぎ澄ませ、俺は一歩を踏み出した。

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