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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第1話 殺人カリキュラム④

「今日は渡辺先生は、体調不良のためお休みになった」

 そう言って教室に入ってきたのは、現代文の斉藤だ。何故かいつもジャージ姿で、キレると説教が長いことで有名。

「出席を取る」

 淡々と斎藤は言い、名簿を開く。

 珍しいな、あの体力馬鹿の渡辺が体調不良とは。雪でも降るんじゃ無いか?

「…………百鬼零」

「はい」

 出席確認を斉藤が取り、俺は適当に返答する。

 朝のHR。このHRが終わると、校長からありがたいお話が体育館であるらしい。毎月1日は全体朝礼といい、校長が色々語るのだ。主に若者への説教とか、昔の武勇伝とか。そんな感じのやつ。はあ、めんどくさ。

 斉藤が教室を出ると、途端に教室は騒がしくなる。

 英語の課題がどうの、数学の宿題がどうの、期末試験の範囲がどうの、芸能人がどうの、スポーツがどうの、アニメがどうの、ゲームがどうの、そんな話ばかりだ。

「ふふふ」

 そんな中、一人の少女が小さく笑っているのが目に入る。

 彼女を取り巻くように、10人以上の人間が一心不乱に話しかけている。

「赤染さん、昨日のドラマ見た?」「赤染さんは部活とかしないの? 良かったらテニス部に……」「赤染さんっていっつも成績トップだよね。どんな勉強してるの?」「赤染さんって休日何してるんだろう」

「みんな、みんな、そんな一遍に喋られたら、私何を答えたらいいのか分からなくなっちゃう」

 困ったように微笑する少女。転校生でもないくせに毎日転校生みたいなことをやってのけている学園のアイドル的存在。そして、生徒会長。あの優秀な結ですら一目置いている女生徒。生徒会員同士、仲良くやってるらしい。表面的には。

 この少女の名は、赤染アンリ。桃色の髪、赤い瞳。芸能人が霞むルックスに、成績は常にトップ、運動能力も常に最高評価、明るく、声も可愛く、誰にでも優しく、教師からも同級生からも先輩からも後輩からも、誰からも好かれている少女。


 ――――完璧。完璧という言葉を、具現化して人間にしたら、きっと赤染アンリができあがるのだろう。


 だが、結の赤染アンリに対する印象は、

「あの人は全てが作り物でしかない。あの人自身を、どこにも感じられない」とのこと。俺は醒めた目で赤染を見据えていた。

「…………」

「…………」

 不意に、赤染と目が合う。

 ゾクリとするような冷笑を一瞬だけ浮かべ俺を牽制すると、取り巻きにアイドルのような笑顔を向けて談笑を始め、引き連れて教室を出て行ってしまう。

 絶対に関わってはいけない人間ランキング1位。俺の中で。完璧なペルソナを持つ人間ほど、恐ろしい人間はいない。

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