第4話 Fランクの怪物④
「お前の闇は、深いな……」
勝手に興奮してる赤染を軽く受け流し、俺は赤染から距離を取る。
《百花繚乱》―ヒャッカリョウラン――
赤染は即座に異能を使ってくる。ジェネシスを無数の華の形にして放出してくる技。回避は困難。防御をしても恐らく拘束されるか、破壊される。最善手は回避。だが、この狭い階段の空間でそれも困難。どうす――――
《智者一失》――チシャノイッシツ――
――――ヒュン。
何かが俺の頬をかすめていった。灰色の光。グレイジェネシス。それが矢だと気付くのに、数瞬遅れて気付く。
矢が駆け抜けた軌道を、《百花繚乱》が避けていく。
まるで、磁力で反発するかのように。
結がグレイジェネシスで凶器化された弓を構え、射貫くように赤染を見据えていた。
「……弓の凶器化? そんなのアリなの?」
「《堕落遊戯》とは別に持つ、私の“二つ目”の能力。射った軌道からジェネシスを反発させる。地味な力ですが、回避能力でいえば《守護聖女》なんかより、ずっと上です」
結は誇らしげに断言する。
「異能には無限の可能性があります。先輩には文武では勝てないかもしれませんが、ジェネシスでは私の方が先輩です。兄さんの邪魔をするのなら、たとえあなたでも許しません」
不敵に笑い、結はジェネシスで出来た灰色の翼をはためかせる。
「言うようになったわね、結」
赤染も結に応えるように、不敵に微笑う。
「兄さん、行って。ここは、私が」
「だが、お前。グレイジェネシスのランクはそんなに高くないんじゃ?」
「切り札も余している。問題ない。もう10秒も無い! 行って! 私を、信じて」
結は生首の入ったスポーツバックを放り投げ、俺はそれを受け取る。
「行って、兄さん! あと五秒!」
「…………っ」
結の鬼気迫る何かに押され、俺は振り返ること無く屋上のドアへ向かう。
「行かせない」
立ち塞がる赤染。お前は、いつも、俺の邪魔をする!
「赤染ェェェエエエエエッッ!」
剣を構え、脇目も振らず無茶苦茶に突進する。無策で突っ込むしか無い。赤染がどんなことをしてこうようとも、俺にはもうそれしかない。一つしか無いドアに赤染が立つのであれば、ブレーキのぶっ壊れたトラックのように突っ込むだけだ!
「……っ」
俺の狂気の瞳に、目尻を歪め僅かに赤染が唇を嚙む。
「本気の百鬼くんのトリガーが、まさか女の子一人の為だなんてね。少し失望!」
赤染も叫び、翼をはためかせながら、俺に突っ込んでくる。
ここでしくじれば、本当に終わりだ。
セリカが、終わる。
それを考えれば考えるほど、興奮する。
セリカが泣き叫び、絶望し、狂い、壊れていく。
それが、 しい。
俺の精神にノイズが走る。真逆の感情。破壊衝動と、セリカを助けたいという欲求。
相反する思いが沸き出すと同時に、あの頃を思い出す。




