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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第4話 Fランクの怪物②

 「あと、45秒。もう間に合わ――――」

 結が呆然と呟く。

 「んなわけねぇだろ。40秒でこいつを殺して、ドア開けて行くぞ結」

 もし間に合わなければ、SSになった上でリリーを殺す。だがそれはあまりにも希望的観測。やはり確実を期すのであれば、赤染アンリを殺すのが一番良い。

 「……ナメられたものね、私も」

 「堕ちたな、赤染。誰よりも高貴な筈のお前が、殺人鬼のパシりとはな」

 嘲笑いながら、俺は階段を駆け上がる。俺からあふれ出すのは、スカーレットジェネシス。よし、このランクなら今の俺でも――――

 「相変わらず人をおちょくる天才ね、あなたは。それがあなたの手なのだと頭では分かっていても、やっぱりイラっとしちゃう」

 赤染は冷笑しながら、スカーレットジェネシスを身に纏う。

 「お前は俺が殺す!」

 「あなたは私が、殺す」

 「「キルキルキルル」」

 セリカがいなければ、あの時俺は勝てなかった。飽くまで二対一だからこそ勝てただけ。

 そういう意味では、俺にとってもこれはリベンジマッチだ。

 「「はぁッ!」」

 お互いの剣が鍔迫り合い、火花が走る。額がくっつきそうなほど、ヤツとの距離が近い。美少女と顔を近づけるといえば甘い感じがするが、やっていることは血で血を洗う殺し合いだ。

 「ねえ、見せてよ本気を。本気の百鬼くんを。君は今まで、誰にも見せたことないでしょ?」

 目を見開き、愉しそうに赤染が息を弾ませる。体重をかけ、そのまま俺を重力で押し込もうとしてくる。

 「思えばお前は初めから俺に注目していたな」

 俺はジェネシスを翼に形態変化させ、赤染のGを殺す。

 「それはお互い様。でしょう?」

 赤染もにっこりと微笑い、翼を生やしすと一気に押し込んでくる。

 その笑顔を見て、過去の記憶がリフレインする。



 「初めまして。私は赤染アンリ。東宮中学からきました。よろしくお願いします」

 入学初日。そうだ、一年の頃も同じクラスで、ヤツはこんな風に笑っていた。その笑顔を見て、男どもはそわそわし、女どもは初めは嫉妬していたが、徐々に赤染の人柄に惹かれ、信頼するようになった。

 赤染と二人で話すことはまずなかった。ヤツは誰とも仲が良く、誰からも好かれていて、常に人に囲まれていたからだ。俺は常に一人でいることを選んだ。なれ合うのは苦手だった。

 だがたった一度だけ、ヤツと二人で話すことがあったのを思い出す。クラスメート全員の財布が盗まれたあの日だ。赤染は全員と個人面談をし、俺も例外ではなかった。

 「百鬼くん、手間をかけるわね。あなたにまで来てもらって」

 空き教室、黄昏時。赤染は憂鬱そうに微笑する。

 「べつにいいさ。アンタがやらずとも、どっちみち教師がやっていた。それだけの話だからな」

 「確かにそうかもしれないけれど、そう言ってもらえると助かるわ。ありがとう」

 ほっとしたように赤染は微笑むが、俺は赤染の笑顔に心をかき乱されたりはしない。平常心のまま、冷徹に赤染を見据える。女は微笑むことで男を取り込もうとしてくる。油断も隙も無い女郎蜘蛛のような生き物。

「それにしても災難だな、アンタも。常に誰かから期待され、こんなくだらない案件の始末までしなくちゃならないとは。本来なら教師がやるべき業務の筈。全員がアンタに依存してる」

 「そうかしら。必要なことを、できる人間がやる。ただそれだけの話よ。あなたが犯人ではないことは分かってるわ。あなたはこんなくだらないこと、絶対にしないから」

 ただそれだけの話。それは俺の口癖だった。俺の口癖を、真似た……? 警戒心が沸き出すのを感じる。他人の口調を真似て好感度を上げようとするのは、心理誘導のミラーリング効果と呼ばれる手法だ。意図的にやっているのだとしたら、大した女だが……。

 しかし、俺にとってそれは逆効果でしかない。心理誘導技術を持つ人間だと判断したらそいつのことは生涯100%信頼しない。よほどのことが無い限り、その瞬間で有害な人間と見なす。そう決めている。

何故なら俺が、俺自身が、有害な人間だからだ……。

 「警戒したわね。やっぱり」

 俺の反応を見て、愉しそうに赤染は微笑う。

 「わざとつたなくやってみせ、鎌をかけたか? 俺がミラーリングに気付くかどうか」

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