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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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幕間 狂女と聖女②

 私はある日、先輩の家に忘れ物をして、それを取りに戻ったことがある。

 さっきまで結も先輩もいた筈なのに、不自然に静かだった。私も、無意識に音を当てないように足音を殺して歩き、先輩の部屋を開けて、そこで見たものは――――

 《堕落遊戯》――ダラクユウギ――

 灰色のオーラを身に纏い、クールな結が見せたことが無い、うっとりとした顔。

 結は、先輩に甘えるように抱きついていた。

 「……っ!?」

 意味が分からなかった。目の前の光景が、夢だと思える。

 二人は無言で、何も言わない。異様な雰囲気だった。

 「……にもらった……があれば……私でも……でも……催眠状態……やっぱり私には……できない」

 かろうじて聞き取れたのは、催眠という言葉のみ。私は逃げるようにその場を去った。

 「はぁ、はぁ、はぁ」

 何かから逃げるように、私は必死に走った。

 何故、逃げてしまったのだろう。

 あのドアを開けて、私は結を糾弾すべきだった。

 先輩と付き合ってることは、結だって知ってる。私からも、先輩からも、伝えてある。

 なのに……どうして……?

 私は……どうすれば――――

 その迷いは、未だに晴れることはない。

 昔は無邪気に仲良くいられた、同い年の幼なじみ。

 時には喧嘩をすることもあったけど、私にとってはたった一人の親友と言える存在。

 それが、私にとっての百鬼結。

 なのに、結は――――

 私と同じように、先輩のことを好きだというの?

 妹なのに、そんな関係、許される訳が無いのに……。



 「っ、リリー、あなたという人間は」

 私は思いきり、リリーを睨み付ける。こんなことを思いつくなんて、どうかしてる。いや、だからこそか。こんなことを容易に思いつき、実行できるからこそ、こいつは《赤い羊》なのだ。

 私の身体から、ジェネシスが溢れ出す。ただ、その色は純白ではなく、灰色。グレイジェネシスだ。

 「少し穢れたね。そうそう、その調子。優しい人間、善人というものは、本当に優しいわけでも、その本質が善という訳でもない。どんな人間であろうと、最初はウギャーウギャーの赤ん坊からスタート。そこから今に繋がってるわけだから、その過程で人格形成がされるわけだよね。つまり、君は知らないだけだよ。知らないだけ。人間の汚い部分を、闇を、悪意を、なんにも知らないで、綺麗な空気だけを吸って生きてきただけの人間だから、私の悪意を1ミリも理解出来ないんだ。でも、今ので少し分かった? 自分の闇」

 「私の、闇……?」

 「表と裏の、裏の部分。たとえば、恋。いいよね、恋は。好きな人と結ばれて、満たされた人生を幸福に謳歌する。でもそれは、飽くまで表の部分。その恋が成就して初めてそう言える。じゃあ、裏は? 叶わない恋。絶対に叶うことが許されない恋。恋敵がいて、その恋敵が自分の思い人を容赦なく奪い、それが許される世界。自分は惨めにそれを後ろから見ていることしか出来なくて、悔し涙を流して耐えるしか無い。そんな恋も、世の中には沢山あるよね。嫉妬。その感情が産み出す闇。それは深淵に一番近いかもしれないよ。君が今、僅かではあるけど、それを抱いたよね。嫉妬したよね、百鬼結に」

 「……っ」

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