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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第3話 生首プール⑮

「おせぇよ、キルキルキルル」

 スカーレットジェネシスを剣として、具現する。ああ、やはり。ランクが上がった。

 俺は苦い冷笑を噛み殺すと、単身、真っ直ぐに敵陣に突っ込んだ。

 「殺せ、殺せ殺せ! 一歩たりとも近づけんな! テメェが盾で死んででも止めろ! 役に立てよゴミどもォォ! 金ははずむ! 金ははずんでやる! 俺の為に働け! 俺の為に尽くせェェ! 死ぬまで働け死んでも働け金の為に働けよォォ! 金の、金の為にィィ!」

 唾を飛ばしながら、血走った目で命令を下す田森に虫ずが走る。大手企業、国家の中枢にいる幹部連中は全員こんな感じなんだろうと直感する。人を、命を、人生を、人の価値を、金にしか換算できなくなったら、田森と同じ。もう二度と、真っ当な人間には戻れまい……。人を金でしか換算できなくなったら、終わりだ。その罪深さに気づけさえしないのだから。

 「ゴミが……」

 金の奴隷が。生きてるだけで恥ずかしい。生きててすみませんって、全人類に土下座しろよ。

 「だ、駄目です! スカーレットジェネシスなんて、私たちじゃ」

 「お、俺も無理だ! 盾にもなんねぇよ!」

 「Sランクなんて想定外だァ!」

 兵隊達は焦り、剣を召喚することすら忘れあわてふためている。

 「結、時間はあとどれぐらいある?」

 走りながら俺は問う。

 「あと4分でセリカが壊される。屋上まで戻る時間を考えるなら、タイムリミットは1分」

 「……ミナゴロシだ」

 両足にジェネシスを集中。加速し、まずは一人その首をはね飛ばす。

 「へ?」

 男子生徒は間抜けな声を上げながら、首は空へと高く舞い上がる。即座に、十閃。ソレを繰り返す。

 ものの10秒で、俺は17人の人間を斬殺することに成功した。これが、Sランクの力か……。能力を使う暇も与えはしない。秒殺だ。田森に従っている時点で、生きている価値は無い。たとえ能力によって操られ支配されているのだとしてもだ。

 「他愛も無い、な。骸骨や赤染に比べれば、雑魚もいいところ。これでノルマは達成した、が……」

 「逃がさねえ、逃がさねえよ……よくも、よくも俺の奴隷を、労働力を……。お前を、俺の奴隷にしてやる……。ジェネシスさえ、《家畜奴隷》さえあれば、俺は王なんだよ。俺に逆らうヤツは、全員殺して、奴隷にしてやるんだ……。馬鹿にしてきたヤツ、全員をなァァ!」

 唾を飛ばしながら、目をギョロギョロさせて叫ぶ田森。

 「キルキルキルルゥゥ!」

 田森が剣を召喚し、前へと歩みを進める。田森からスカーレットジェネシスがあふれ出す。こいつも、Sランクか。

 「お前を奴隷にしてやるよォォ! 俺の、《家畜奴隷》でよオォ!」

 田森の必死の形相を見て、

 「ふふ、ははは、ハハハハハハハハハハッッッ!」

 思わず俺は、爆笑していた。

 「何がおかしいッ!?」

 「奴隷に? 奴隷に全てやらせて、お前はどうするんだ? 何もしないつもりか? 人に全てさせて、お前は何をするんだ? なあ? 教えてくれよ田森」

 「王は何もしねえよ! 王が奴隷に強いるのは、牛としてミルクを搾り取って、豚としてエサをやって、蟻として働かせて、犬のようにこき使い、鶏のようにくびり殺す。それだけだ」

 「王……か」

 王という単語を聞いて真っ先に連想するのは、セリカだ。

 可愛い俺のセリカ……。

 今この瞬間も、俺と結を健気に信じて、自らの破滅を覚悟し、殺人鬼リリーと向き合っている。俺にとっての王は、白雪セリカのような人間だ。

 誰よりも弱いからこそ、誰よりも強い。

 人の持つ弱さを知っていて、怒り、そして許すこともできる。

どうしようもないほどの善人。だからこそ、必ず破滅する。

この社会で生き抜くには、善性は邪魔でしかない。

生物は常に弱肉強食。優しい人間とは、ただの弱者でしかない。弱者は食われて終わりだ。

騙され、犯され、奪われ、ありとあらゆる悪人に骨までシャブリ尽くされる。

それが、セリカだ。純粋な善人は必ず破滅する。自殺する。

だから、世の中には善人が少ない。破滅し、自殺していくのだから当然だ。

だが、だからこそ――――

 「何もしない王、か。なんだそりゃ? 豚以下じゃねえか。なのに、なんでそんなに自尊心が強い? 豚以下のくせによォォ?」

 「……な、んだと?」

 「……なあ、田森。一つ訊こう。本当に、本当に、本当に、お前にはこの生首たちが百万円にしか見えないのか? こいつらだって、死にたくないって、生きたいって、思ってたんだぜ……?」

 プールに転がっている大量の生首。うつろな目で、あるいは憎悪を露わに、あるいは悲しげな目で、その死に顔が俺たちを見つめていた。気が狂うほどの血の臭いを風に乗せながら……。

 「はァ? ハハ、何意味わかんねぇこと言ってんだァ? お? これは、俺の金だァァ! 俺の百万円だァ!」

 田森は高らかに笑い、札束を歯に加えてヨダレをボタボタと垂らす。

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