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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第3話 生首プール⑫

 更衣室の影に隠れながら、俺たちは様子を窺っていた。

「…………おえぇッッ」

 結が、必死に手を口に当て、懸命に吐き気を堪えていた。俺はじっと、目の前の地獄絵図を見つめる。息をする度に、あまりの血の臭いにむせそうになる。

 ――――想像以上だ。これは、あまりにも……っ。

 首、首、首。

 ざっと百はあるだろうか。生徒の生首が、地下プールの浴槽の中ひしめき合っていた。その異様な光景は圧巻としか言いようがなく、浅い赤い血の風呂の中、顔を半分血につかりながら、大量の生首が転がっている。

 一つでも異常なのに、その生首の多さに目眩がする。

 「合計、百二十一! 百二十一! 一億二千百万円! 一億二千百万円! おおっ、おおおおおおおおおおおッッッ! 金だ! 金がこんなにあるぅぅぅ!!」

 夢見るようにうっとりとした顔の背の低い童顔の男子生徒が、両腕を広げながらプールサイドを走り回り、歓喜し、喜びに打ち震え、叫んでいた。

 「田森様、お喜び頂けて何よりです」

 「田森様! お役に立てて光栄です」

 「全ては田森様の為に!」

 10人以上の生徒が、取り巻きのように田森を囲み、田森をたたえていた。

 「おおっ、おおおおおおおおおおおおッッッ!」

 田森は歓喜し、拳を天へ掲げていた。田森からは、スカーレットジェネシスがあふれ出ている。こいつ、Sランクか……。

 「ま、この程度の狂気ではS止まりか。やはりSSの壁は分厚いわね……」

 そして、監視台でワイングラスの赤い液体を揺らしながら、愚者どもを見下ろしている、花子の姿。床にはトマトジュースと書かれたペットボトルが空になって転がっていた。

 …………狂っている。あまりにも狂っている。

 生首が大量にひしめき合っているプールというだけでも、頭がおかしくなりそうなのに、生首の数に歓喜し打ち震える男子生徒と、それを褒めちぎる取り巻きの生徒達。そして、それをつまらなそうに見下ろす殺人鬼花子。この光景を見ている時間が長ければ長いほど、自分の精神が音を立てながら崩れていくのを感じてしまう。

 「田森慎二。お前、どんだけ殺す気よ。他の生存枠がなくなっちゃうじゃない」

 花子がどうでもよさそうな目で田森を見下ろし、ぼやくように言った。

 「は、花子さん。俺は大量に生首を集めて、金を集めますよ。大学の学費にもなるし、新車とかも買うんです」

 みかんを手で思い切り握りつぶしたような笑顔を浮かべる、田森。

 ――――田森慎二。一目見て、殺したくなった。気持ち悪い、ただそう思った。なんだ、これは。今まで見てきた悪とは方向性が違う。守銭奴というやつか? 保険金殺人タイプか? ただただ醜い。殺人に醜いもクソもないが、ここまで酷いと流石に……吐き気がする。目の前がくらくらするほどの、例えようのない気持ち悪さ。人間とは、これほどまでに醜くなれるものなのか?

 「……うっ」

 さすがの結もこの景色には応えたのか、顔色が青白くげっそりとしていて、今にも吐きそうな顔をしている。

 「D班、帰還です。田森様、新たな首をお持ち致しました。また、出入り口の見張りが殺されていました。そちらの首も、鞄に入っていますので、どうぞ」

 階段の出入り口から現れた三人。平伏し、田森に頭を下げる女子生徒が現れる。その両隣には、生首を持つ二人の男子生徒がいた。プールサイドにはざっと十五名が田森の近くに待機し、油断なく周囲に視線を張り巡らせている。

 「おおっ! 五百万! 五百万か! 新しい五百万! じゃあこれで生首合計百二十六か!合計金額は一億二千六百万円! だが出入り口の班がやられているとはな……何があった?」

 「我々も侵入者かと思い、階段を散策しましたが不審な者はおりませんでした」

 「クソの役にも立たない雑魚が。見張りも出来んのか、ゴミ。ま、五百万に換金出来るなら、それでもいいんだがな? リサイクルは大事だ。ゴミでも金になる。生首が回収出来ればなァ」

 「は、はい! ゴミでもお金になれば、いいですよね!」

 兵隊の女がご機嫌を伺うように田森に同調している。

 「……金にはなったが、情報はナシか。つくづく使えねぇ」

 「……っ」

 田森は女子生徒からぞんざいに生首を受け取ると、五つの生首を浴槽の中にサッカーボールのように蹴飛ばして、転がり落とす。

 「金だ、金だ金だ金だァァ! 金だァァ! 生き残りはあと何人だ!? 信者以外の人間はあと何人だ!? 全て殺せぇ、殺し尽くせ! 首を取ってこい!」

 田森は咆哮する。金が欲しいと、狂ったように叫んでいる。

 「ベンツが買えるぞ! リムジンが買えるぞ! 家はプールつき! 家政婦も執事も雇い放題だ! 女は侍らし放題だァ! ハーレムだハーレム! マンションだってまるまる一個都内に買える! 二個三個四個買える! マンションで専属性処理女を飼えばいい! 世界一周どころか、宇宙だって行ける! なんだって出来る! 金、金なんだ! 金こそ至高! 金こそ全て! 金さえあれば何でも出来る! 金で愛だって買える! 百鬼ィィ、結婚してやってもいいぞォォ!? 金なんだろ!? 金なんだよな!? 金さえあれば股開くんだよな!? 洗脳なんぞしねぇでも、金があれば俺のモノになるんだよなァァ!! 結婚してやってもいい!結婚してやるよォォ! 金持ちなら誰でもいいんだよなァァ!? 金さえありゃ男なんてみんな一緒だもんなァァ!? 女なんて皆そんなもんだよなァァ!? ウケケケケケケ!」

 ケタケタ笑いながら、両腕を広げて田森は叫ぶ。

 そして、思い出した。そういえば、結はよくモテていたせいで、何人か男をフっていたという話を。そのうちの一人が、確か田森とかいう名前だった。こいつか……。


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