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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第3話 生首プール⑦

 「……両方だ」

 「兄さんはやっぱり、悪い人だね」

 くすりと、結は微笑う。

 「善悪の価値基準は、その時の社会の在り方、多数派の決定で決まる。今、この場は透によって支配され、その価値基準が塗り替えられている」

 「だからって人を殺していい理由にはならないって、セリカなら言いそうだけど」

 「その通りだ。セリカが正しい。どんな世の中、どんな社会、どんな多数派の決定であろうと、悪は悪だ。正当化することは許されない。だから俺は、これから悪を行う」

 「凄いね、その強さ。私には無いモノだなぁ」

 「結の冷静さは、俺には無い」

 「私は多分、サイコパスなだけだよ。前頭葉がなんかおかしいのかも」

 「サイコパスは自分をサイコパスとは言わないだろ」

 「あれ、そっか。そうかもね。ふふ」

 呑気に会話をしているように見えるが、全力疾走だ。それに、こんな会話でもしていないと、頭がおかしくなりそうだ。セリカの破滅を意識するだけで、リリーの狂気に飲み込まれそうになる。それを知った上で、結はこんな会話をしてくるのだろう。

 「着いたか」

 「ドア、閉まってるね」

 俺たちはようやく、体育館前へ到着する。不気味なほど静まりかえっており、淀んだ雰囲気が流れている。そして、ドアの前に血だまりがある。中から、外へと……。

 「結」

 「ん?」

 「……怖くは無いのか? いくら冷静な性格とはいえ、お前はこの状況に適応し過ぎている気がする」

 結の、背中が遠い。こんなに遠かったか? こいつの背中は……。

確かに結は子供の頃から大人びているところはあったが、ここまでではなかった筈だ。

 「…………」

 結は静かに、じっと俺を見る。その目は俺を見ているようで、どこか遠くを見ているようだった。

 「恐怖という心理状態に私が陥ることは、生涯ないよ。そういう風に、作り替えられたから。臨死体験を1120回繰り返すことによって、私は死と、そして恐怖を克服した」

 昔を思い出すように目を細め、結は呟くように言う。

 作り替えられた? 誰に? どうやって? 様々な疑問がわき出すが、結はドアを開け行ってしまう。

 「結!」

 「昔話をしている暇は無いよ。一刻も早く生首を回収しないと」

 結の背中の、その先にあるもの。それは…………。

 「地獄絵図、だな」

 目眩がしそうな程の、強い血の臭い。頭がクラクラして、狂いそうになる。

 首なし死体が、大量に転がっていた。生首は全て、ない。誰かが回収し、プールまで持って行っ――――

 「…………」

 目が、合う。

 一人だけ、生きている人間がいた。短髪で童顔の、か弱そうな少女。

 その少女は、スポーツバックを重そうに両手で持ち、小動物のように怯えた表情で俺たちを見ている。スポーツバックの底から、ポタポタと赤い液体が床に落ちていた。

 「キルキルキルル」

 結が剣を握り、即座に駆け出す。俺も慌てて、その背中を追いかける。

 「ひっ!」

 少女は悲鳴のようなものを上げ、勢いよく走り出す。少女からはイエロージェネシスがあふれ出す。

 「逃がさないよ」

 冷たい声で結が言うと、その両足にグレイジェネシスが集中する。スケートの如く、電光石火で結は少女の前に移動すると、何の感情も無い空洞のような瞳で見据えていた。

 「まずは止まれ。止まらなければ殺す。鞄を置け、置かなければ殺す」

 淡々と指示を出し、結は少女を威圧する。少女は蛇に睨まれた蛙のように硬直すると、指示通り鞄を置いた。

 「鞄を開けて、中身を見せろ。見せなければ殺す」

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