第3話 生首プール⑥
「おい、電気椅子処刑でセリカは殺さないとか言ってなかったか?」
「殺さないとは言ったけど、電気ショックを与えないとは言ってないよ。死ぬ寸前まで苦しめて電気を止めて、死ぬ寸前まで苦しめて電気を止めて、これを永遠に繰り返し続ける。発狂するまで、発狂するまでね。そうすればもう二度と、もう二度と! セリカちゃんは人間の言葉を喋れなくなっちゃうかもね。フフ、フフフ、フフフフフフフ! こんなに高潔で芯の強い子が、犬みたいに涎と鼻水と涙と小便を無様に垂れ流してぶっ壊れる様、見てみたいよね!? そう思わない!? そう思わないかな!? 彼氏くんっ! 恋人がぶっ壊れていくその時の君の顔を、このギャラクシーで撮りたいなァァ!!」
嘲笑いながらリリーは、ギャラクシーのレンズを俺に向ける。
「お、まえはァァ……」
「ハハハ! 凄んでも駄目だよ。もうこれは決まったこと。さて、それじゃあ《発狂密室》は部分的に解除しておくね。ドアからだけなら、出入りできるようにしておくから。翼で外側からは来られない。出入り口は、一つだけね」
「……? ああ」
何故か念を押すように言うリリーに、違和感を覚える。だが、その違和感の正体までは分からない。
「ギャラクシーのタイマーセット完了。じゃあ、行っておいて。よーい、どん! 19分59秒! 58秒! 57秒! ハハハ、セリカちゃんがぶっ壊れる姿が楽しみだなァァ!」
ケタケタと嘲笑うリリーに、血が沸騰する程の怒りがあふれ出す。
「リリィィイイイイ!」
怒りの余り、俺からスカーレットのジェネシスがあふれ出す。殺す、殺してやる。この女、俺が殺し――――
「落ち着いて、兄さん。まず勝てないから。自殺行為。セリカを救いたいなら、まずは深呼吸。いい? 分かった?」
俺の手首を、冷たい手が握りしめてくる。
「生首を四つ持ってくること。それだけに意識を集中させて。感情を揺さぶられて指針を見失えば、それこそリリーの思う壺。無駄な時間は一秒もない。思考をシャープにして」
結の声を聞くと、次第に心が落ち着いていく。歯ぎしりしながら、俺は自らの怒りに耐える。結はゆっくりとドアを開け、屋上を去ろうとする。俺も後に続く。時間が無い。
「セリカ」
結は振り返り、冷たい目でセリカを見つめる。冷酷、というよりかは、自らの感情を殺すような、静かな目だった。
「正直、葛藤してる自分もいる。だけど、だけど……。どんな手を使ってでも、私が必ずあなたをその椅子から降ろす。けど、それはあなたの為じゃ無いから。それだけ」
「……結」
セリカは苦しげな、泣きそうな顔に歪む。
「……?」
セリカと結の会話に、深いものを感じるが、それを読み取ることが出来ない。二人の間に、何らかの密約があるのかもしれない。
「行くよ、兄さん」
結は早足で行ってしまう。俺も慌てて追いかける。
「まずは体育館へ行く」
階段を駆け抜け、結は走りながら指針を述べる。
「……なるほど。あそこなら生首が大量にある確率が高いし、乱戦であれば回収も困難。真っ先に行くなら、あそこか」
「回収済みの可能性もあるけどね」
「最悪、生きている人間から回収する状況も想定すべきだな」
「それは、相手が持っている生首をっていう意味? それとも、自分の手で相手を生首にするっていう意味?」




