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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第3話 生首プール④

「…………」

 リリーの言葉に、誰一人として口答えしない。いや、できないと言った方が正しいか。確実に間違っているのはリリーで、悪なのはリリーなのに、何故か反論ができない。透のような存在感が、僅かにある。

 「私が悪だと証明したいのなら、総出でかかってくれば? ま、一瞬で殺すけど」

 「……っ」

 ビリ、ビリと、来るプレッシャー。押しつぶされそうなほどの威圧感。なんだ、こいつ。大学生でこんな威圧感、普通じゃ無い。これが、快楽殺人鬼というものなのか……?

 「…………チャンスをあげる」

 気圧された俺たちを安心させるように、急に柔らかな微笑を浮かべるリリー。その態度の変容さに警戒してしまうが、それすらもヤツは計算しているのだろうから、たちが悪い。

 「チャンス?」

 結が問い返す。

 「20分。猶予をあげる。その間、この椅子に一人座って。20分以内に、生首を四つ持ってくれば、特別に見逃してあげる。自分が殺したのでもいいし、他人が殺したのでもいい。生首を持ってくれば、それでいい」

 「20分……20分か。戻ってこられなければ……」

 「お察しの通り、殺すよ。で、そのスナッフビデオを君たちの携帯に送ってあげちゃう。フフ、ハハハ、その時はどんな顔するんだろうね? 死ぬ方も、死なせた方も。楽しみだね」

 「……同じ、人間なの? 信じられない、そんなこと思いつくなんて……」

 セリカが怒りと悲しみの入り交じった顔で、リリーを睨み付ける。

 「座るのは誰でもいいよ。話し合いで決めな?」

 リリーの言葉に、俺たちは顔を見合わせる。

 「俺が座ろう。それが一番リスクが少ない」

 真っ先に志願する。20分で四つの生首を回収し、運ぶことを考えたら、失敗する確率の方が高い気がする。他の生徒達とも抗争するだろうし、危険だ。俺が……やるべきだ。

 「公平にジャンケンとか?」

 グーを掲げながら提案したのは、結。

 「……いいえ、私が、やります」

 セリカが深刻な顔で、静かに宣言する。

 意見が割れたが、やはりここは俺が――――

 「私の、私のせいです。今の、この事態は。私が、先輩と結にノルマを達成しないことを強いたから。今でも、自分の考えを曲げる気はないし、間違ってないって、思ってるけど、でも、今、この瞬間は、私のせい。だから、責任を取るのは、私だよ。これは、絶対だから」

 ぎこちない口調で、セリカは宣言する。その目はどこまでも真っ直ぐで、誰にも反論を許さない風格がそこにあった。

 「なっ、セリカ、お前……っ」

 俺が呼び止めるも時既に遅く、セリカはリリーの元へ歩みを進めていく。

 「私が、その椅子に座ります」

 「…………」

 リリーが、何故か沈黙し、困惑したようにセリカを見つめる。

 「普通、もっとこう醜くさぁ、口汚く争い合うと思うんだけど、意外だね。そんなにあっさり決めちゃっていいの? 裏切るかもよ、あの二人。君が殺されるペナルティなんて、なんとも思ってないかもしれない。君が椅子に座った瞬間、とんずらこくかもよ?」

 リリーは残酷な微笑を浮かべ、セリカにそっと囁く。

 「そんなこと、あの二人は絶対にしません。それに、仮に間に合わなくても、その時はその時。潔く死にます」

 「は? 意味分かんない」

 「あなたには分からないでしょうね。人を信じるってことの、気持ちが。その大切さが」

 セリカは蔑むような、哀れむような瞳をリリーへ向ける。

 「…………っ」

 リリーはセリカの言葉に顔を歪め、忌々しげに四つん這いになっていた男子生徒の尻を蹴り飛ばす。

 「……ぁ、はぁ、はぁ、ったく、つい感情的になっちゃったよ。ダサいな、私。まいーや。その強気がいつまで続くのか、見物だね。人間は生存欲求の奴隷だよ? 生きるためなら、どんなことだってやる。君が死の際にどんな風に醜く泣き叫んでボロ雑巾みたいに死ぬのか、見届けてあげる」

 「お金と力しか、信じられない人って、どこまでも哀れですね。可愛い顔が台無し。とっても醜い。鏡でも見てお化粧直しした方がいいですよ」

 セリカは無表情ではあるものの、冷たい一瞥をリリーへよこす。さっきまで震えてた筈なのに、またセリカの変なスイッチが入ってしまったらしい。こうなったアイツは誰にも止められない。無論、俺にも……。

リリーも作り笑いをしていたが、流石に頬を引きつらせていた。おっかねえ……。両方おっかねえ……。

 「今すぐ殺してやってもいいんだけど、小娘ちゃん?」

 「ノルマを達成する意志がある私達を殺せば、あなたは《赤い羊》からペナルティを受けるのでは?」

 「は? 何言って――――」

 「さっき、言いましたよね。ノルマをこなす意志がないなら、殺してもいいと。では逆に、ノルマを達成する意志がある私達をあなたは、殺せない。あなたの設定した20分ルールを、私達は遵守します。だからあなたも、自分の作ったルールぐらい、遵守しなさい。それすらできないなら、あなたはただの我が儘なガキです。社会を語るなんて、百年早い。そう、思いませんか?」

 「…………」

 リリーが絶句している。俺も、結ですら呆然とセリカを見ていることしかできない。赤染を一発で黙らせたのはやはり、マグレじゃない。セリカは、開花し始めている……。

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