第3話 生首プール③
「黙れ」
《拷問遊戯》――ゴウモンユウギ――
リリーが掌を前へと突き出すと、そこから電気椅子が突如として現れる。これが、こいつの異能力……。
渡辺を殺したスナッフビデオの凶器の疑問が解決した。さっきから観察していたが、このリリーという女は生粋のサディストだ。俺とは質が違うし、たちが悪い。人が苦しみ殺され死んでいく様を心から楽しめる快楽殺人鬼。そんな拷問狂の異能力となれば、指定した拷問器具の召喚が出来てもおかしくはない。ジェネシスの異能は、恐らく欲望の具現化。透は狂人を育てたいという欲望、花子は人間を肉片に変えたいという欲望、骸骨は死体を玩具に遊びたいという欲望、セリカは癒やしと平和を願う欲望、俺は生者の魂を根底から支配し操りたいという欲望。
ジェネシスには、色濃く欲望が影響される。
「君たちは精神が人よりも強い。この状況で、誰も殺さず、誰にも殺されず、24時間を乗り切ろうとしてる。愚か極まりないけれども、その心意気は素直に認めるよ。だ、け、ど」
俺たちを馬鹿にするように人差し指を振りながら、電気椅子を指さす。
「透さんを殺そうなんて愚考の極み。その傲慢、私が潰してあげるよ。さ、まずは一人、ここに座って」
「な、にを……言ってるの。そんなところ、座るわけないでしょ」
結が眉を顰めて、リリーを睨む。セリカは身をすくませ、震えている。渡辺の死に様を思い出したのだろう。
「ノルマを達成しないのなら、この場で全員殺してもいいことになってるんだよね」
「意味が分かりません……。あなたは何を言っているの?」
いっぱいいっぱいだろうに、セリカが抗議の声を上げる。
「あー、言わなきゃ分かんないか。ノルマを達成しようとしない無能に一秒たりとも生きる価値なんてないから、今すぐにでも殺してもいいって透さんからは許可が下りてる。だから、私の暇つぶしで玩具にして、殺そうかなって。実際、そうしても誰にも怒られない。花子ちゃんにも、文句は言わせない」
「狂人が……っ」
「ねえ、君たち。君たちは働いたこと、ある?」
リリーは自分が召喚した電気椅子に、自ら座りながら、肘掛けに頬杖をついて、尋ねてくる。
「ない、が。それがどうした?」
「どんなくだらないクソみたいな仕事でも、お金が発生してる以上それは仕事だよ。本当にこんなことやる意味があるのか? っていうゴミみたいな仕事なんて世の中腐るほどある。最近AIが労働者に取って代わるんじゃないかなんて話もあるけど、くだらない機械ですら出来ちゃう仕事って見方だって出来るよね。単純作業や、腹芸だけを仕事にしちゃった無能の寿命は秒読み。てか、もう詰んでんだよこの国は。つまり、本当にどうしても絶対に必要な仕事なんて、世の中で見て全体の数パーセントしかないってこと。でも、なんでみんな働くと思う? クズみたいな上司、取引先、顧客、会社に媚びへつらって、死に物狂いで毎日のように働いて。……生きるためだよ。生きるために、働いてる。でも君たちはそれをしない。つまり、殺されても文句言えないってことだ。私も昔は金持ちだったけど、会社が潰れてからは色々やってきたからなぁ……いやぁ、懐かしい懐かしい。リリーになる前のことはあんま思い出さないようにしてたけど、君らみたいなヌルいガキを見ると、色々思い出すなぁ……」
リリーは歪んだ笑みを浮かべ、遠い目でここではないどこかを見ている。
「ノルマを達成しなさい。それができないなら、ここで全員死ね。電気に焼かれて、ね」




