表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
48/391

第3話 生首プール①

「腹、減ったな……」

「おにぎりあるよ。教室にだけど」

「私も、お腹減りました……。はぁ……」

 あれから、4時間。俺たちは誰も殺さず、誰にも殺されず、ひたすら逃げ回り、屋上まで来た。床に尻餅をつきながら、空腹を嘆く。方針は決まったものの、具体的な手段がない。

「ちょっと教室行っておにぎり取ってくる」

 俺がそう言って立ち上がろうとすると、両手を掴まれる。……右手はセリカ、左手は結だ。

「な、何すんだよ」

「危険過ぎる。教室なんて、どんな罠がしかけられているか。それに、この状況で一度でも放置された食べ物なんて、怖すぎて食べられないでしょ。廊下も死体だらけだったし」

「同感です」

「でもこのまま飲まず食わずはキツいだろ」

 俺が言い返すと、瞬間。視界が紫に染まる。

 《発狂密室》――ハッキョウミッシツ――

 屋上という空間を、ドーム状のパープルジェネシスが覆う。上空から、ゆっくりと何かが降りてくる。紫色の翼を生やした、悪魔のような女がそこにいた。

「はぁい、どーも。リリーちゃんでーす」

 ショートボブの髪の女が、掌をひらひらと振りながら、愉しそうに笑う。リリーと名乗る女は、鎖を握っていた。鎖の先には、白目を剥いた四つん這い男子生徒。「あ、あ、あ」と譫言を言いながら、白目を剥いて唇から唾液を垂れ流している。

「お、前は……っ」

 思わず絶句する。この女は、さきほど壇上にいた《赤い羊》のメンバー。

「来ちゃった☆」

 ウインクし、リリーはにこやかな笑みを浮かべる。

「パトロールしてたら、なんだか面白い子達を見つけちゃったから、つい挨拶にね。君たちはノルマ達成とか、しなくていいの? 結構、みんなノルマ達成してるよ? 四百万で新車買おうってさ。あとは、大学の学費とか? 人殺した金で大学とか、ウケるよね」

 街中のどこにでもいる、普通の若い女のような話し方をしているが、こいつはスナッフビデオを撮ることを趣味とする正真正銘の狂人。快楽殺人鬼だ。少しでも油断すれば、精神を飲み込まれる。

「目的は何だ」

 俺は簡潔に問う。が、リリーは意味深に微笑するのみ。

「べっつにー。なんとなく視界に入ったから来ただけ。本当だよ?」

 目を丸くして、男ウケしそうな甘ったるい声で微笑みながら、小首を傾げるリリー。

「そんなことよりさ、先に自己紹介しようよ。コミュニケーションの基本でしょ? 私はリリー。透さんに会う前は大学生で、環境学部に在籍して、キャバクラで普通にバイトしてた、どこにでもいる女の子だよ。今はこんなだけど? ハハッ!」

 無邪気に笑って、リリーは男子生徒の尻をつま先で思い切り蹴り飛ばす。

「わうっ!」

 男子生徒は大きく吠え、失禁する。

「うちは親が厳しくってさぁー、高校時代なんかは門限は18時までとか、勉強で成績は常にトップでいろとか、付き合う男は父親が決めるとか、冗談みたいな話でこれがマジでね。毒親ってやつ? お金では苦労しなかったけど、束縛が半端なかった。入る大学も親に決められたし、就職する会社も決められてたし、結婚する男も決められてた。全部親が決めるの。とまぁ、そんな感じの人生歩んでました。ま、ジェノサイダーになってからは即行家族はミナゴロシにしたけど! 親戚も含めてね♪」

 ケラケラお腹を抱えながら、リリーはおかしそうに笑う。

「今までの自分は全部捨てちゃった。私はリリー。生まれ変わったんだ、透さんに出会って。て、何語っちゃってるんだろ、私。変なの。ま、いーや。次はそっちの自己紹介してよ」

 まくし立てるようにリリーは語り、掌を俺たちの方へ向ける。

 妙なヤツだ。殺人鬼のくせに、人懐っこいというか、なんというか。

「……兄さん、こんなヤツ相手にしなくていい。何も応えちゃ駄目」

 結が警戒心を露わにリリーを睨み付け、セリカも怯えたように身をすくませる。

「いいの? 私を無視して。少し、機嫌悪くなるけど」

 リリーは一瞬で真顔になり、ゴミを見るような目で俺たちを見据える。瞬間、ドス黒いパープルのジェネシスが、一気にリリーからあふれ出す。ビリビリとしたプレッシャーに、トリハダさえ立ち、思わず殺気に震える。


 ――――殺される。


 まず間違いなく勝てない。骸骨のようにはいかない。骸骨は本気を出していなかった。余興と称して、殺し合いそのものを楽しみ、遊んでいた。だが、目の前のこの女は本気で俺たちを最初から潰しにかかってくる可能性が高い。そうなれば、終わりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ