第2話 インモラル・エクスタシス⑲
「じゃ、戻ろうか」
「フン」
いばら姫が不機嫌そうに鼻を鳴らし、異能を展開する。
《自在転移》―ジザイテンイ――
紫色のジェネシスが渦状に二人を包み込み、一瞬で姿を消す。
一人につき、異能は一つではないようだ。セリカもそうだ。だが、俺には《監禁傀儡》しかない。ジェネシスについて考えれば考えるほど、不可解だと思う。
「せ~んぱいっ、頭撫でてください。約束」
セリカは何故か精神が幼児退行しているし、にこにこして俺に抱きついて首筋に顔を埋めてくる。くすぐったい。あの品行方正で高潔なセリカが……だ。
「ああ」
セリカの頭を優しく撫でると、セリカはうっとりと目を細め幸せそうに唇を半開きに開ける。
「ふぁ……ぁ」
「何してるの、兄さん」
ぎくっ。背後からの声に、恐る恐る振り返る。
「さっきぶりね。取りあえず無事みたいだけど」
結が呆れたような顔で俺たちを見ていた。
「それは、何のプレイ? こんな時によくもまぁお盛んなことで」
「プ、プレイとかじゃありません」
さっと手を放す。不覚にも敬語になってしまった。
「…………私、は」
次第にセリカの瞳の焦点が戻っていく。
「気がついたか?」
俺はそっとセリカの顔を覗き込むと、セリカは悲しげに微笑んだ。
「…………終わったんですね」
「ああ、終わったよ」
「私、二度も人を……この手で」
セリカはそう言って、両手を苦しそうに見つめる。ドクンと、セリカのその苦しげな顔に心臓が甘く高鳴る。ああ、もっと苦しめたい。と思うと同時に、理性がやめろと泣き叫ぶ。ああ、本当に俺は人として終わってるな……。
「赤染先輩を倒したのは見事の一言でした。セリカ。兄さんを守ってくれて、ありがとう」
形だけの笑みを浮かべ、結がセリカに声をかける。
「…………うん」
セリカは上の空なのか、形だけの態度で頷く。
「…………」
「…………」
両者、そのまま沈黙。子供の頃から三人で一緒にいて、昔は毎日のように遊んだり喧嘩したりしていたのに、な。中学以降から、相変わらず二人のやり取りはぎこちない。
「まずは、今後の方針を決めたいと思う。アイツらが提示した生存条件を呑むのであれば、生首を最低でも12個、回収する必要がある。まずは、安藤を殺した分としてここに一つあるからノルマはあと11個の訳だが――――」
「どうして」
俺が口を開くと、セリカが傷ついたような目で俺を見据える。
「どうして、そんな酷いことを冷静に言えるの?」




