Prologue③
「…………」
花子は僕の手を取ることはなかったが、忌々しげにため息を吐くと、小さく頷いた。
「透、私はひとまずアンタについていく。けど、アンタが道を違えたら、その時は分かってるわよね? 私は私の目的の為にしか行動しない。セリカを殺し、零を手に入れる。その為に私はジェノサイダーになったんだから……ね」
「ああ、もちろんだよ」
素晴らしいな、と思う。圧倒的な力を前に支配されるしかない状態で、僕を牽制し、支配しようとしてくる花子は、やはり逸材だ。
「ああ、楽しみだな……」
僕はうっとりと呟き、眼下の景色を見下ろす。
ボゥと、僕の身体から漆黒のオーラ、ジェネシスがあふれ出していく。
この高揚、胸の高鳴りは、抑え切れそうに無い……。
ジェネシスにはそれぞれ色と、それに対応したランクがある。
精神状態、性格、意志、欲求、様々な要因が絡まり合い、その人間が持つジェネシスが決定される。
快楽殺人鬼の領域は紫のSS、殺人鬼の領域は赤のS、囚人の領域は藍の特A、模範囚の領域は青のA、反逆者の領域は黄色のB、労働者の領域は水色のC、愚者の領域は緑色のD、善人の領域は灰色のE、聖人の領域は純白のF。
今まで生きていて、僕は純白のFランクには会ったことが無い。きっとこの世には存在しない、幻の生き物なのだと、今ではそう思う。だが……。
ヒコ助、リリー、骸骨、ヒキガエル、いばら姫、そして花子。
もう、見つけてある。花子にはああ言ったが、実は力はもう"分けて"ある。
6人の快楽殺人鬼がこの先、一体どんな破壊美を見せてくれるのか。
……そして、僕の最初で最後の失敗作。
――――オメガ。次に会うとき、君はどんな顔をするんだろう。
――――とても、楽しみだ。