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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear㉓【透視点】

 

「キルキルキルル」


 接近戦でケリをつけるか。

 2周目は一歩も動いていない。いや、動けない。

 4周目救出の為に、持ち場を離れられないのだろう。

 もともと近接対応は苦手のようだし、付け込むならそこか。

 もう一度2周目と位置交換すれば、こちらの勝ちだ。

 それは向こうも承知しているはず。死に物狂いで抵抗してくることだろう。

 その隙を突く。


「…………」


 2周目は投擲の構えを取る。

 何を思ったのか、《諸刃之剣》を投げるつもりらしい。

 僕の位置をめがけて投擲。


 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――

 《陣頭指揮》――ジントウシキ――

 《速戦即決》――ソクセンソッケツ――


 テレキネシスで叩き落とすも、軌道を直線に修正。加速され相殺される。

 2周目は即座に《陣頭指揮》を解除し、一瞬で《奈落之底》のゲートを閉じないように能力を再発動している。

 なるほど、そう来るか。

 2周目の策を把握する。

 僕が近づこうとする隙をつく為に、僕が避ける前提で剣の位置を調整。最終的に背後から、遠隔操作して僕を撃つつもりだ。

 《陣頭指揮》はあらゆる軌道を自在に曲げる。

 だがその為には、囮が必要だ。


 《重機関銃》――ジュウキカンジュウ――


 思った通り。

 2周目は膝を地面につき、マシンガンを両手で僕へ構え、射出。

 テレキネシスで弾丸をはじき落とす。

 一発一発の威力は高くない。この程度では威嚇にもならない。

 囮にしてはお粗末だ。

 そして2周目の持つ独特の雰囲気。誰かに似ている。


 ……?


 わずかな違和感を抱く。

 本当にこれが策なのか? だとしたら、浅い。

 それとも、他に“何か”あるか。

 2周目は直情型とは程遠く、戦略を練り、戦術を組み立てるタイプ。

 3、4と比較すると異質。僕の影響だけだろうか?


 ……オメガ、か。


 想像するしかないが、情報不足で破滅した1周目から、『運命の環』を調整し、2周目へ繋げる為に情報が必要だ。オメガであれば、その役割を背負える。

 2周目が情報を集める為だけの、失敗する前提の捨て駒だとしたら、オメガが自分の色に染めるよう育てた可能性もある。情報を管理する為には、頭脳が必要だ。

 2周目。僕と似ているというよりは、僕が育てたオメガの影響を受け、僕と似ているように感じた……というのが正確かもしれないね。


 ――――だとすれば、これは罠だ。


 十中八九、誘われている。

 2周目は自ら、接近戦が苦手だという刷り込みを逆手に取り、僕を狙っている……。

 ここは退くべき、か。


 ……白雪セリカには、気を付けろ。

 絶対に油断するな。最初から全力で殺しに行くつもりで、対応した方がいい。


 ヒキガエルの言葉を思い出す。

 流石は僕の至宝。助言は正しかったというわけか。


「……面白い」


 ならば、こちらも捨て身で行こう。

 今更、お互いに退路などない。

 殺し合うことでしか、僕らは共存することができない。

 たとえ回数制限が無くとも。何度、時を巻き戻しても。僕と君は殺し合う。そんな気がするよ。

 運命の相手といえばロマンチックだが、裏を返せば呪いのようなもの。

 永遠に壊し合いながら、誰よりも深くお互いを理解し合う。

 そんな、美しく醜い絆。


「乗ってあげよう、君の策に」


 2周目の策は読めない。恐らくこのまま接近戦を仕掛ければ、再起不能に近い打撃を受けるのは間違いない。だが胸中にある感情は恐怖ではなく高揚と期待。

 何を見せてくれるのか。

 そして、どうなろうとも。僕がやることはたった一つ。


 ――――彼女を、殺すことだ。


 シンプルなこの答が、君の策を上回れるかは分からないけどね。


「……」


 返ってくるのは言葉ではなく、殺意の視線。

 いい目だ。

 無駄な思考は一切ない。


 さて、行くとしよう。


 破滅の予感を噛みしめながら、僕は翼をはためかせ、2周目の元へと飛んで行った。


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