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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear㉑【透視点】

 

 だが、問題ない。

 ゲートさえ閉じれば――――


 《陣頭指揮》――ジントウシキ――


 2周目がタクトを振るう。

 ゲートが閉じられない。

 見えない力によって、阻まれる。


 ……まさか。


 《陣頭指揮》。軌道を操る能力。

 僕がゲートを閉ざそうとする軌道を反発させているのか?

 思っていたより、ずっと厄介だ。

 4周目を殺す為に、その前に2周目を消さねばならない。

 いや、待て。そもそも4周目にはアンカーが無い。ゲートが閉じられずとも、落ちていけば上がってこられない。どちらにせよ、終わりだ。


 《色即是空》――シキソクゼクウ――


 カキンと音がし、僕を斬った《諸刃之剣》が実体化し、『第三の腕』で剣を地面を突き刺す。

 あの攻撃は、攻防一体だったのか。

 アンカー代わりに、剣を地上に突き刺すため。

 むしろそちらが本命。

 僕に回避行動を取らせることで後手に回し、妨害をさせない意図。アンカーを確実に地上に突き刺す為の行動。

 あの一撃は当てられずとも、意味があったということ。


 ――――手ごわい。


 短い間だが、明らかに4周目の進化速度が異常だ。

 戦闘感覚は、もはや花子と遜色ない。

 不本意だが、僕が育ててしまったという要因も大きいか……。


 《二人三脚》――ニニンサンキャク――


 2周目の『第三の腕』が伸び、4周目の『第三の腕』が鎖の手錠によって繋がれる。

 2周目の『第三の腕』が、4周目の『第三の腕』を鎖で引っ張り、地上に引き戻そうとする。


 ……なるほど、そう来るか。


 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――


 テレキネシスで腕をねじ切ろうとするが、


 《色即是空》――シキソクゼクウ――


 《色即是空》――シキソクゼクウ――


 斬れない。とてつもない強度。

 4周目の能力を借りる形で、2周目がジェネシスで生成された『第三の腕』それぞれを実体化したということか……。


 《諸刃之剣》――モロハノツルギ――


 《五大神器》――ゴダイジンキ――


「指定、刃銃」


 2周目は4周目の能力を使いこなし、自分の能力と組み合わせて発動してくる。

 4周目の救助と僕への攻撃を同時に行っている。

 周囲にもまんべんなく目を配り、僕の奇襲にも最新の注意を払っている。

 それにしても、ここまでとは。

 2周目は恐らく、僕と4周目の《二人三脚》戦を観察に徹したのかもしれない。僕の底を見定め、4周目の力を戦力として把握する為に。

 先ほどまでとは明らかに動きが違う。

 4周目を前に押し出すのではなく、4周目と能力を組み合わせて連携する盤石な態勢。

 4周目はシラユキセリカ総体としての心臓部。それを見殺しにするリスクを負って、戦局を掌握した。中途半端に高速で殺しあう僕らに割り込むより、観察に徹した方が、最終的な勝率が高いとシビアな判断を下したということ。


 剣の先端、蛇の銃口からレーザーが放たれる。

 あれを食らえば、また能力を一つ封印される。忌々しいね。


 ――――マズいな、これは。


 今のところ、防戦一方だ。

 戦局と能力の運用が、格段に上手い。


 《陣頭指揮》――ジントウシキ――


 何よりも脅威なのは、2周目の弾丸は不規則に“曲がる”ということ。

 レーザーはシグマの軌道を描くように、ジグザグに空間を疾駆し、僕めがけて直進してくる。

 だが、目で追える速度ではある。

 これなら《紆余曲折》で威力を殺しつつ、フェイクを織り交ぜながら《右往左往》で対処可能。問題な――――


 《速戦即決》――ソクセンソッケツ――


 前触れなく、急にレーザーが加速。

 かろうじて目で終えていたはずのその光は、いつの間にか僕を貫き、シグマの鼓動を描いて虚空へと消えていった。


「《多重展開》封印。相殺指定、《五里霧中》」


 2周目は銃口から噴き出す硝煙を、そっと唇で吹く。

 僕以上に、4周目の能力を使いこなしている。


 《聖女抱擁》――セイジョホウヨウ――


 全身から流れ出る血も、一瞬で治癒される。


「ここからはもう、あなたには“何も”させません。終わりです」


 死刑宣告を告げる刑務官のように、2周目は冷たい目で微笑した。


能力メモ:《五里霧中》の効果。ジェネシスを霧状にし、敵の目をくらます能力。2周目の所持能力。自分の射線も通らなくなるので、撤退専用の能力。2周目の弱さの象徴で、自分でも自覚しているからこそ真っ先に消耗能力として選択した。お披露目の機会無し。

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