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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear⑳【透視点】

 

 確かな手応え。

 花子に動揺した一瞬の隙を付けたのは僥倖だった。

 《色即是空》の能力のポテンシャルは計り知れない。

 4周目が“完成”すれば、間違いなく僕を超える存在に成る。

 僕を超える存在の育成。それは悲願ではあったが、シラユキセリカのような存在ではないことだけは確かだ。

 今、ここで、確実に……殺しておく必要がある。

 僕が彼女を殺して“後悔”することはない。

 仮に僕にプラマイゼロ地点があったと仮定したところで、どうせその時にならなければならない。

 また同じことの繰り返しになるか、ならないか。

 それはこの時点で思考することそのものが無駄でしかない。

 何度繰り返されたところで、無限に彼女を殺し続けるという道もあるのだから。

 選択肢に囚われてはいけない。

 僕にとって邪魔な者をひたすら殺し続けることこそが、僕が歩む道だ。

 《紆余曲折》でシラユキセリカを抑え込みながら、《奈落之底》へ沈めていく。

 あとは入口を閉じれば、“終わり”。

 出口は僕が構築しない限り、無い。つまり二度と出られない。

 この能力で彼女を殺すことはできないが、確実に発狂させることができる。

 花子のようになるか、それとも完全に自我が崩壊するかは定かではないが、出口さえ作らなければ二度とこの世界に現れることも無い。

 この能力は異なる世界を繋ぐゲートを構築する。

 焦熱地獄と呼ばれる世界へと繋がっている。

 つまり無効化もクソも無い。

 無効化能力と言えど、実際に存在する世界を消すことはできないからだ。

 《奈落之底》に呑まれたら最後、僕が能力を発動し、出口を構築しなければ出られない。

 つまり僕を殺してもチェックメイト。

 出口を構築する手段が失われ、永久に身体を焼かれ続ける。

 1周目に交代した場合のみ、どうなるかは未知数だが、4周目が壊れればGランクへの道も潰える。事実上、彼女の敗北が決定する。


 ――――この世界以外にも、世界はある。この答えで満足か? 小僧。


 シラユキセリカの影響で、僕は人間に近づいている。

 失った記憶はついに戻らなかったが、記憶を失う前に僕はジェネシスに質問し、答えを得た。この世界以外の世界に焦がれ、僕はその世界を繋ぐ門を欲した。

 地獄へと繋がる架け橋を。それを作る能力を。

 意外とあっけないものだったが、なんとか辛勝と言ったところか……。


「!?」


 ゲートから淡い、白き光が零れる。


 なんだ、あれは……?


 一瞬それが『第三の腕』だと気付くのに遅れる。

 手に握られるのは《諸刃之剣》。

 獅子奮迅の如き勢いと速度で、十字架の剣が僕を切り刻まんと回転する。

 この状況で、防御を捨ててまさかの攻撃。

 普通の人間なら、恐怖や苦痛に防衛本能に徹するところ。


「――――やはり狂っているね、君は」


 独り言が、音として響く。同時に世界に音が戻る。

 《音信不通》が切れたか。広範囲で、効果もかなり強力だが、どうやら数秒程度の効果しかないらしい。

 だがあらゆる音源が遮断されれば、戦闘感覚は鈍る。


 《右往左往》――ウオウサオウ――


 だが、甘い。

 僕は少ない可能性でも、シラユキセリカの反撃を予測し、位置交換できるよう備えていた。

 手近な黒い玉と位置を入れ替え、その一撃を回避――――


 《陣頭指揮》――ジントウシキ――


 空ぶった一撃は蛇のようにうねり、僕への位置を修正し、貫く。

 これは、軌道を曲げる能力……!


「《空中分解》封印。相殺指定、《守護聖盾》」


 シラユキセリカの声が響く。


「ちっ……」


 回避を予測されていた。

 回避後の位置を予測。攻撃の方向を修正され、食らったか……。


 ゆらり、と何かが立ち上がる。


 《奈落之底》を背後に、その女は僕を真っすぐに見据えた。


「そういえば、まだお前がいたか」


「二度も恥をかかせてくれたお礼の仕方を、考えていましたよ。透さん」


 慇懃無礼な口調だが、隠しきれない凄まじい怒気。

 殺意で迸るジェットブラックジェネシスが鮮烈に揺らめき、その女は僕を睨み微笑する。


 ――――2周目。


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