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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear⑱【透視点】

 

 ……何故、心が軋む?


 かつてない程に、訳も分からず僕の心がざわついている。

 後悔するだと? この僕が。

 たかが小娘一匹の命。何の躊躇も無い。

 僕を掌握しようなどと、思い上がりも甚だしい。

 そこまで言うならいいだろう……。


 ――――コロシテヤル。


 明確な殺意の炎が、僕の胸を焦がす。

 だがその瞬間……強烈な“デジャブ”に襲われる。

 完全に、同じ場面。この見下ろすような角度、シラユキセリカの悲し気な表情、後悔するという宣告。経験したことが無いのに、朧げな記憶のようなノイズが一瞬視界に走る。

 知っている……。僕はこの場面を知っている……?

 だが、デジャブの正体は分からない。あるのは正体不明の激情だけ。

 この、らしくもない激情こそ、彼女が指摘した核心。つまり、図星なのでは?

 愚かな怒りと、冷めた自己批判が同居し、僅差で理性が勝つ。


 シラユキセリカがいない世界。


 この世界は繰り返されている。

 もし仮に……この世界が“4”周目ではなかったとしたら?

 シラユキセリカにとっての“4”周目が、本当に“4”かどうかは誰にも判らない。観測者の不在。

 なら、僕がシラユキセリカを殺した後の世界も存在するのでは?

 仮に僕がシラユキセリカを殺したとし、その後の世界はどうなる?

 僕はどうする?

 再び《赤い羊》の王として、この世界に殺戮を齎すか?


 私を殺せば、あなたはこれから永久にまた孤独の中で彷徨い続けることになる。


 あり得ない……。

 あってはならない……。

 いや、そもそもシラユキセリカが不在の世界では、世界を繰り返すこともできないだろう。愚かな仮定だ。存在しなければ、そもそも前提が成り立たな――――


 ――――僕は男には興味ないですが、透さんがそこまで重宝するなら全力でお支えしますよ。今後ともね。


 唐突に。僕の腹心、恭しく頭を垂れる骸骨の顔が脳裏にちらつく。

 そうだ。シラユキセリカが不在でも、世界は繰り返せる。

 死体となったシラユキセリカを《冒涜生誕》すれば、可能性は残る。

 だが能力も性格も未知数。そして生前とはかけ離れた人格となることは確定している。

 蘇生後は全く別の生き物となっていることだろう。

 それを0周目の僕がどう思い、扱うかも未知数。

 そして、僕は僕を上回る可能性を愛する傾向がある。

 百鬼零だったゼロが良い例だ。

 あり得ない、とは言い切れない。

 全ては想像でしかない。


 ――――プラマイゼロ地点。


 オメガと結託し、構築した『運命の環』の始まりと終わりの場所。

 それはシラユキセリカにとって目指す場所だと、ずっと思っていた。

 だが……。それは飽くまでも“シラユキセリカにとって”の場所でしかない。

 もし“僕にも”プラマイゼロ地点があったとしたら……?


 ――――それが、“一番最初に彼女を殺した世界”にあるとしたら……?


 バカバカしい、と一蹴する。

 くだらない妄想だ。

 だが、何故か心臓は早鐘を打っており、息苦しさを覚える。

 感情としてはあり得ないのに、ロジックだけは成立してしまう不気味さ。

 あってはならない”0周目”、それを絶対に無いと断定することは誰にもできない。

 僕は……いや、どちらにせよ、決着をつけるしか僕らに道は無い。

 僕が破滅するか、君が破滅するか。

 二つに一つ。


 それ以外の道は、無いのだから。


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