表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
348/355

幕間㉓ 破滅の足音①【白雪セリカ(3周目)視点】

 

「……っ」


 片膝をつき、私は花子を見上げていた。

 体中が、無意識に震えていた。寒気すら走る。

 情けないと我ながら思うが、こいつに与えられた苦痛と恐怖の数々は私の精神を破壊する寸前まで、かつては追い詰められた。

 2周目を透の元へ行かせたことを後悔しそうになっている自分の弱さを、認めざるを得ない。

 急に花子が現れたこの展開は、想定していた未来の一つではあった。ただ、透は周回ごとに微妙に立ち回りを変えてくる。

 透を倒せていない状態でSSS化した花子をぶつけてくる展開は、前回にはなかった。

 私の時はゼロを倒した後。つまり花子は最後だった。でもだからこそ、記憶に新しい。

 ズキりと、左腕が痛む。冷静な思考を遮断させるほどの、泣きたくなる程の激痛。

 花子の炎で火傷を起こしてしまった。かろうじて距離は取れたが、花子の本領発揮は近接戦。純粋な力だけなら、透を上回るジェネシスの持ち主……。

 《聖女抱擁》を使っても“癒すことができない”。

 花子の《処刑烈火》は、《聖女抱擁》を強制的に無効化する。

 殺意の塊のような能力。Fランクを苦しませて殺す為だけにジェネシスを極めたとでも言わんばかりだ。

 仕方なく、左腕を切り落とし、《色即是空》で再度具現化させる。

 《色即是空》は、存在を確定させる能力。

 でも私はこの能力を使いこなすことが、遂にできなかった……。

 《色即是空》はジェネシスの消費量が多いので、《聖女抱擁》の代替のような、贅沢な使い方はよくないが、2周目の《満天星夜》がある限りは、この立ち回りで問題ない。

 花子は炎と同化したジェネシスを身体中に纏いながら、歯をむき出しにして、ニタニタと笑っていた。目の焦点は私だけを捉えている。

 目と口の部分だけがジェネシスの炎を覆っておらず、かろうじて人だということが分かる形状。

 SSS化した花子は、自我が崩壊し、言語能力も、思考力も、何も残っていない。

 “人間性”の消失。

 透によって激痛を与えられ続け自我がぶっ壊れ、発狂した状態。

 死ぬか死なないかのギリギリの炎による苦痛を与えられ、こうなってしまった。

 2周目から花子がこうなった経緯を聞いた。2周目は骸骨を拷問して吐かせたらしいが。

 花子に残った自我の残滓は、私……白雪セリカへの殺意のみ。

 4周目は良く仕上がってはいるが、恐らく《諸刃之剣》で花子を弱体化させることはできないだろう。

 透は怪物だが、飽くまでも理性で判断する。

 だが花子は違う。

 全ての判断基準が私への“殺意”のみ。

 そして発狂したとはいっても、身体能力やずば抜けた戦闘センスは健在。それどころか、常時ゾーンに入っているようなもの。

 私を殺す為だけにジェネシスを極めた、殺戮マシーン。

 純粋な力だけなら、透も、ゼロも、上回る。

 そしてSSS花子には、更に悍ましい特性がある。

 私達は繰り返せば繰り返す程、運命を“修正”することができるが、花子はそれすら嘲笑うかのような能力を持っているのだ。


 《千里之眼》――センリノメ――


 花子の両目が赤黒く濁り、黒きジェネシスを放つ。

 この能力が本当に“そう”なのか、確証は持てない。

 でも、“そう”でもなければ説明できない。

 花子は私達がどんな能力を使うのか、動き方のクセ、弱点、あらゆる全てを知っているのだ。

 2周目の時も、3周目の時も。私たちは戦闘スタイルも能力も違うのに、私たちの能力や攻撃を先読みし、まるで経験したかのように対応してくる。

 2周目から戦闘経験を学んだ私の動きすら把握している。

 1周目の時から、私達を学習し、そして予知しているとでも考えなければ、説明がつかない。

 だから、透戦の時のような駆け引きはできない。

 最初から最後まで殺す気で、全力で立ち向かって、それでようやく五分五分。

 そして、脅威なのはそれだけじゃない。

 “周回ごとに”、所持能力が若干異なるのだ。

 しかもアップグレード後の能力は私にとって常に最悪の相性。

 まるで回を重ねるごとに私を殺せる確率を上げ、運命を修正していくような狂気の殺意。

 私達がダウングレードしていくのとは真逆。


 ――――花子は運命を繰り返せば繰り返す程に、強くなっていく。


 繰り返せば繰り返すほどに弱くなっていく私達と相反するように。


 4周目が“最後”の運命なら、“この花子”は間違いなく歴代“最強”であることは疑いようがない。


 私達が無限に運命を繰り返せない呪いのような存在。

 《起死回生》が有限であることも理由の一つではあるが、花子の存在こそ私たちにとっての寿命。

 繰り返し続ければ、いずれ花子は全てのSSSを上回ることになる。


 ――――それが、花子という存在だ。


 《千里之眼》を発動し終えた花子は、“私”ではなく、4周目の方向に視線を向けた。

 ゾクりと背筋が凍る。

 私が本体ではないことに気付いたのだ。


「……っ」


 どこまでやれるか、分からない。

 “この花子”にどこまで、私が通用するのか……。


花子戦に行こうと思ったけど透戦が想定より長引いたのでサブタイを急遽変更しました。

内容に変更はありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ