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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear⑭【白雪セリカ(4周目)視点】

 

 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――


 受け止めた《諸刃之剣》の力が、増していく。

 テレキネシスか。

 剣を受けながら、頭をフル回転させる。

 能力シェアのアドバンテージを私は全く活かせていない。

 こちらは能力を見せすぎたし、透は力を隠し続けたのが弊害になっている。

 私達の時間感覚は加速している。2周目の援護は期待できない。

 透の《色即是空》の運用方法は想像を絶していた。

 でも、飽くまでも私の能力。

 透から学習できた時点で、それが私の糧となる。

 天啓とでもいうべきか、ある策が閃く。この戦闘感覚センスも透と戦い続けてきた恩恵か、呪いか。

 何でもいい。


 ――――透を食らい尽くし、”その先”に私は行く。


 《五大神器》――ゴダイジンキ――


「指定、羽弾ハダン

 前方、後方、辺りかまわず撃ち尽くす。

 2周目に着弾するリスクもあったけれど、2周目は床に伏せているはず。

 下を避け、中、上空を意識して小さなシャボン玉を割り尽くす。

 シャボン玉との位置を入れ替えさせない。

 鉄球の動きは相変わらず鈍い。この速度なら、透との位置交換は間に合わない。いける。


「指定、刃銃ジンジュウ


 皮肉なことだ。

 テストを除き。実践発投入での『刃銃』がまさか透の《審判之剣》とは……。

 私と透はお互いにお互いを食らいながら、命を削りながら、破滅しながら前へ進んでいる。

 小さな頃。セックスという行為を知ってから。その対義語って何だろうと思ったことがある。

 あの時、ついに答えは出なかったけど、恐らくは、これがそうなんだろうと直感する。

 私と、透の、この歪な相互依存こそが……きっと。


 ジェネシスの蛇が、《審判之剣》に巻き付く。

 でも、《諸刃之剣》の刀身を受けているせいで、蛇の口が空を向いている。

 この状態で撃っても当たることは無い。でも、今の私には……。


 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――


 テレキネシスの能力。

 これを使えば、弾道を曲げることが……できる!

 私との位置を交換されたとしても、この状態なら《諸刃之剣》を透は受けることになる。

 透をダブルバインドに、間一髪で嵌めることができた。

 攻防一体。この一撃は、重い。

 不意打ちで翻弄できると思ったのか、そうはさせない。

 罠にかかったのはそっちだ。追い詰めるのは私。

 《空中分解》されたとしても、《色即是空》で無効化できることは透が私に学習させてしまった。この一撃、必ず決めてみせる……。

 《審判之剣》の『刃銃』が当たれば、透は一瞬無能力者になる。

 その瞬間、《五大神器》で急所を外したつつ透の身体を再起不能にし、気絶させ、全能力を封印。《聖女抱擁》で治癒すれば、死ぬことも無い。奇しくも、これは起死回生の一手だった。


「ちっ……」


 いつも涼しい顔をしている透にしては珍しく、不快げに眉を顰め、私が撃った弾丸に鋭く視線の向けていた。透も流石に気付いたのだろうか、この状況がいかに”マズイ”かを。


「足掻くね、シラユキセリカ」


 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――


 透は弾丸をテレキネシスで受け止めようとするが、私のテレキネシスは止まらない。

 さっきは初見で使いこなせなかったせいで、透に綱引きで負けたけど、負けたことで分かったことがある。

 それは、空間全てを自分の五感の範囲に収め、掴み、捻り、押すイメージが必要だということ。

 何かを浮かせたり、操ろうというイメージでは駄目。

 透は明確に、あの時剣を掴み、押していた。

 なら私は、弾丸を掴みながら捻り続ける。

 あとは、ジェネシスで押し切る。

 単純なジェネシスとジェネシスの総力戦。

 今まで何度もぶつかり合って、私と透のジェネシスの質量はほぼ互角。

 そして時間をかけ過ぎれば、加速の能力が切れ、2周目の援護が透を追い詰めることになる。


「足掻かない人生なんて、嘘だよ」


 倒すべき相手。必ず仕留めると決めた敵。

 私は剣越しに、じっと透を見据えて、そう宣告した。


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