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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear⑪【白雪セリカ(4周目)視点】

 

 透は今度はゆっくりと、ジェネシスを溜めながら、少しずつシャボン玉を生成している。同じ手を使うつもりだろうか? らしくない透の動きに違和感を覚えるが……。

 だが、向こうも遠距離戦は望むところなのか、近づいてくる様子はない。

 それどころか、仕掛けてくる気配すらない。

 ひたすらシャボン玉作りに没頭している。

 不気味だ……。何を、考えている?


(さて。それじゃあ、まずは。見よう見まねでいこうか。《五大神器》の使い方を一つずつ私がやるから、同じように真似しよう。それで直感的に覚えてもらう)


 2周目の声に、意識が引き戻される。


(う、うん)


 《五大神器》――ゴダイジンキ――


 白い五つの指輪が、私の右手に具現化する。


(まずは、指の銃。指弾シダン。一番使い勝手がいい。人差し指を前に突き出して、ジェネシスを溜めて、撃つ)


「指定、指弾シダン


 2周目が透を指差して、黒いジェネシスのレーザーを放出。

 透は《紆余曲折》で叩き落とし、歯牙にもかけない。


(威力はそこまで強くない。けど形態化でいちいち矢を作るよりは手っ取り早いし、難しくないし初心者向けだね。ただ、燃費が悪いから、通常時に多用するとジェネシス切れになるリスクがある。そこは注意ね)


「指定、指弾シダン


 同じように真似する。

 やはり透に届く前に、見えない何かに弾き落される。


(じゃあ次は、散弾モード。行ってみようか)


 2周目は右手を、丸いドアノブを捻るように指先を前に刺す。


「指定、指弾シダン


 5本のレーザーはしかし、一瞬で見えない何かに叩き落とされる。


(今のが散弾モード。人差し指だけじゃなく、全部の指を使って5弾同時に放つ。遠距離ショットガン的な感じだね。これは単発モードより威力も命中精度も落ちるから、あんまり使うことは無い)


「指定、指弾シダン


 2周目より的外れに発射された私の5本のレーザーは、透にはたき落されるまでもなく、あらぬ方向に跳んでいった。


(気にしない。次行こう。羽の銃。羽弾ハダン


「指定、羽弾ハダン


 ジェネシスの翼から、大量の羽が弾丸のように透に突っ込んでいくが、これも見えない何かに弾かれて、落下する。

 シャボン玉を割る事すらできていない……。

 《紆余曲折》の威力が、上がっている……?


(ジェネシスの翼を使って、撃つ。これは前にも後ろにも撃てる。ただし威力は最弱。広範囲で威嚇したい時とか、接近してくる敵とか、攻撃の速度とか、命中精度を下げる時によく使うかな。SS以下なら死んでくれるけど、SSSとかF、ダルエルには効かないから過信しないことね。あと見方が近くにいる時には使わないように。巻き込むからね)


「指定、羽弾ハダン


 2周目の真似をして、撃つ。

 特定箇所を狙うというよりかは、雑に前方に大量の弾丸を流すような感じだ。

 透に届くことは無く、これも全弾落下する。


(時間が惜しいから、後ろバージョンは省略するね。次、目の銃。視砲シホウ


「指定、視砲シホウ


 2周目の右目の前に、三つの魔法陣が具現化し、魔法陣を貫通するように扇形の形状の黒い拡散レーザーが放出される。

 でも、飛距離はせいぜい5メートルぐらいで、それ以降の距離で空中分解してしまう。


(咄嗟に間合いに入られて、回避が間に合わない時の近距離射撃。SSぐらいなら即死させられる威力はあるけど、ジェネシスの消耗が激しいので多用は禁物)


「指定、視砲シホウ


 見よう見まねで、撃ってみる。

 確かに、近距離向けの攻撃だ。ジェネシスもかなり消耗する。

 今は《満天星夜》があるから、ジェネシスが無限に溢れてくるけど、通常時に使用すれば、《明鏡止水》の2分の1ぐらいの消耗かも……。


(じゃあ、次。癖が強いけど、最強に近い銃。星銃)


「指定、星銃セイジュウ


 2周目の右目から浮かんでいた魔法陣が消え、バレーボール三つ分くらいの大きさの、黒い星の形状をしたジェネシスが具現化する。くるくると空間を回転しながら、自在に動き回る。


(これはイメージで自在に動かせる。不意打ちで仕留めたい時とか、自分の立ち位置のエイムで不利な時に便利。しかも高火力。ただ敵に撃ち落されたら消えちゃうから要注意ね)


 くるくると回転する星は、遥か上空へ飛んでいくと、いきなり禍々しい黒い光線を発射。透めがけて星型レーザーが一閃する。


「……」


 透は僅かに目を細める。

 これは、《紆余曲折》で落とせない……のだろうか?

 星型レーザーからは離れた距離だというのに“熱さ”を感じる。


 シャボン玉が透をかばう様に前に出て、『星砲』と衝突し、弾け……ない。


 バリバリバリバリと物凄い音を立て、シャボン玉にひびが入り、やがて星とレーザーが消滅する。


(……戦術を変えてきたね)


 2周目が冷徹に微笑する。


(シャボン玉の強度が桁違いだ。一つ一つの生成に時間をかけているのは、練り込んでるジェネシス量が桁違いに多いからか……)


(シャボン玉の、強化……)


 量ではなく、質。

 透の周囲には、5つのシャボン玉が浮かんでいる。

 透が最も得意とする能力は、テレキネシスと、位置を入れ替える能力の応用。

 シャボン玉が割れないことで、透にどんなメリットがある?


「指定、星砲セイホウ


 私も星の銃を具現化し、動作テストをしてみる。

 思ったより、簡単だ。《守護聖盾》と同じ要領で動かせる。


 ――――行け。


 念じて、発射する。

 白い星型レーザーはしかし、さっきのひび割れたシャボン玉に阻まれる。


 けど、今度は貫通する。2周目の一撃で大部分が破壊されていたからだろう。


 《前途多難》――ゼントタナン――


 透が能力を発動する。

 すると、突然レーザーが見えない何かで阻まれ、ゆっくりと消滅する。

 《前途多難》。これは花子が暴走した時に、透が咄嗟に使った能力だ。

 効果は分からない。あの時は確か、炎が細切れにされていたように見えた。一つ言えるのは、防御向きの能力だということぐらいか。

 やはり透は、未だに底が見えない。見えたような気がしても、それすら透が意図的に誤認させた限界に思えてくる。


(2周目、透の能力は分からないの?)


(結論から言うと、分からない。今のもね。透は恐らく、普段から使う能力を意図的に制限している。化け物を飼う為には、自分の限界すら操作しているのかもね)


(……確かに、それは言えてるかもしれない。《諸刃之剣》で透の能力を少しずつ封印していったからこそ、透は普段使わない能力を使い始めた、とも解釈できるし)


 透はこちらを見もせずに、再びシャボン玉の生成を始めている。


(ま、いいや。考えても仕方ない。最後、銃の剣。これが本命の攻撃になる。飽くまでも遠距離で、透の能力を確実に削っていこう)


(……うん)


 無言でシャボン玉作りに没頭する不気味な透に視線を向けながら、私は頷いた。


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