第16話 White≒Clear⑧【白雪セリカ(4周目)視点】
……透の今の動き、あまりにも甘かった。
私に動きを読まれているとは、想像もしていないような態度。それは驕りだ。
ナメていたのだろう……。
1周目、2周目、3周目を目の当たりにすれば、私を侮るのも分かる。
透は無意識に、私を低く見積もった。
でも、この手はもう通じない。
透は間違いなく、私への認識を修正した。
その証拠に、透の表情から余裕の笑みが消えている。
……来る。
透の気配が、変わる。
かつてない殺気に震えそうになりながら、意識を研ぎ澄ませる。
「!?」
「……っ」
大量のシャボン玉が弾け、その全てのジェネシスが透の右手に収斂していく。
球体となるほど凝縮されたジェネシスの塊が、透から放たれる。
黒の矢というより、レーザー光線のように細い。
何より、速すぎる。
目視できないほどの速度。
だからこそ、溜めていたのか。
光のごとく走る黒の光線は、
《必中魔弾》――ヒッチュウマダン――
2周目のタクトの先から放たれるジェネシスの玉が受け止める。
《右往左往》――ウオウサオウ――
けど、透の攻撃はここから始まる。
《明鏡止水》を発動するのはギリギリまで堪える。
透の攻撃には必ず本命がある。それを見極める、までは……っ。
2周目の弾丸と位置を入れ替え、2周目の正面に透は瞬間移動する。
一瞬で間合いに入られた。これは……っ
「キルキルキルル」
2周目は冷静だった。
剣を具現化し、透を斬ろうとする。でも。
《右往左往》――ウオウサオウ――
ただ、位置を入れ替えているだけ。
単純で、地味な能力。
それなのに!
2周目の黒い剣と透は位置を入れ替える。
2周目が握っていた剣の柄は、透の腕に代わっている。
そして、透は更に次の一手を打つ。
《右往左往》――ウオウサオウ――
2周目と、自分の位置を入れ替える。
2周目の腕を掴む側に回った透は、
《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――
「――――っ」
反射だった。
思考ではなく、脊髄反射に近い。
私は無意識に《諸刃之剣》を発動し、透目掛けて斬りつけ――――
《右往左往》――ウオウサオウ――
そしてまた、透は位置を入れ替える。
「え……っ?」
マヌケな声を零したのは、私だった。
一瞬遅れて気づく。
私は2周目を《諸刃之剣》で斬りつけていた。
位置を入れ替え続けた透の本命は、これだったのだ。
私に、2周目を攻撃させ、封印能力を消耗させること……っ。
「《七転八起》封印。相殺指定……《白雪之剣》」
ランダムで選ばれた能力は、よりにもよって2周目の不死能力、《七転八起》。
そして私は、《白雪之剣》を失う。
解除することはできる。でもその代わり、それをすれば……今まで封印した全能力を透に返還することになる。
私は正面に立つ透を、睨みつける。
「2対1なら僕に勝てるとでも? お前たちには共食いがお似合いだよ。楽に勝てると思うな、4周目。シラユキセリカ」
「――――透」