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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear⑥【白雪セリカ(4周目)視点】

 

「……」


「……」


 私と透はじっと視線を交叉させる。

 こっちから攻めるか、カウンター狙いで待つか。

 透の目は静かだった。動揺も興奮も逡巡も無い。ただ次の一手に思いを巡らせている顔。

 恐れはない。

 私の心も静まり返っている。

 ドクドクと心臓はやけにうるさいけれど、それは激しく動いた反動。

 隣に立つ2周目も微動だにせず、チャネリングで話しかけてきた。


(ごめんね、さっきは死んじゃって)

(いや、こっちこそ。私が迷わなければ……)

(それも含めて私の責任だよ)

(……2周目は、《起死回生》以外の、不死の能力を持ってるの?)

(限定不死能力を一つ。《七転八起》。トータル7回まで死ねる蘇生能力だね。《起死回生》と違って時間を巻き戻したりはできないけど、同じ相手に殺されても発動できるし、使い勝手は良いよ。《起死回生》のカウントとは別だしね)


 あっけらかんと2周目は言うけど、それはつまり、8回目の死は避けられない、ということ。今まで何回死んだかを聞こうと思ってたけど、怖くて聞けなかった。2周目は、“あと何回”死ねるのか。

 『運命の環』という狂気の世界で……。


 私の思考を遮るかのように。

 ふいに、透が動いた。

 反射的に私は構えるが、透は不敵に微笑い、唇を開く。


「ヒキガエルがよくジェネシスと人肉を混ぜて、シャボン玉に見立てて遊ぶのが好きでね。僕もたまに真似したことがあるんだ。そう、こんな風にね」


 透の右手から大量のシャボン玉の形をしたジェットブラックジェネシスが具現化され、宙へ浮かんでいく。

 それは確かにシャボン玉に似ていた。

 ジェネシスのみで構成されているという異常な点を除けば。

 大量のシャボン玉は私達を取り囲むかのように空間を満たしていく。


「あらゆる軌道を操り無力化されてしまう《陣頭指揮》がある以上、直線での攻撃は無意味。なら、遊びを入れてみようか。子供というのは、柔軟で面白い」


 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――


 入れ替わり能力の連続使用。

 黒い光線が斜め上から私を貫こうとするのを、左手にジェネシスを纏わせて叩き落とす。

 どうやら透が黒の矢を投げたらしい。

 目まぐるしくシャボン玉と透の位置が何度も入れ替わり、位置を掴ませない。

 透の動きを読むことが出来なくなる。

 透は位置を切り替えながら、巧妙に黒の矢を飛ばしてくる。

 間髪入れずに2周目がタクトを下に振り、無効化するけど……数が多い。

 2周目の集中力を削りながら、また何か本命の攻撃を仕掛けてくるつもりだろう。

 透の性格だ。もう、何となく分かる。


(透は中距離戦術に戻したみたいだね。中距離は私が担当するよ。君は近距離に集中して……)


 四方八方から無規則で攻撃が来る。

 2周目と背中を預け合いながら指示を飛ばしてくるけど、これでいいのだろうか。迷いが生まれる。

 中距離戦の感覚は私の中に僅かに生まれつつある。

 あの、“第三の腕”を上手く使えれば……。


(――――私も、やるよ)


 透が得意な中距離で透を仕留める。


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