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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear②【透視点】

 

 黒き剣の一撃は止められた。


 ――――名前はまだ無いかな。


 そう語る少は悠然と微笑み、黒きジェネシスを身に纏っている。

 シラユキセリカの最後の切り札、“一周目”か。


 《生殺与奪》――セイサツヨダツ――


 《有耶無耶》――ウヤムヤ――


 黒き霧のようなジェネシスが1周目を起点として発露。それに僕のジェネシスが上書きされていく。

 僕の即死能力は何らかの能力によって妨害される。

 たった一度の攻防で確信せざるを得ない。

 目の前の存在は、人外の領域に達している。

 ジェネシスの濃度、呑まれるような底無しの殺気、静かな狂気。

 殺人鬼を育成してきた僕だからこそ、理解できてしまう。

 目の前の存在は、“僕以上”だと……。


 《死屍再生》――シシサイセイ――


 直前、両腕ではなく首を斬り落としておくべきだった。

 捨て身のシラユキセリカが回避行動を取り、一撃がブレて脳にダメージを与えるリスクを恐れ、頭部への一撃を避けてしまった。

 たった一つの、ケアレスミス。

 眼前には究極の黒、1周目。

 背後には蘇生した2周目と、僕の勝ち筋を叩き潰した3周目。

 サマエルは謎の闖入者の相手で、戦力にはならない。

 これは、セリカ包囲網とでもいえばいいか。

 “本体”である4周目を殺せば一気にひっくり返せるが、今目の前にいるのは規格外の1周目。

 打つ手なし……か?

 これほどの苦境は未だかつて経験したことが無い。

 一手一手を丁寧に積み上げても、執念で牙城を崩され、一瞬のミスで全てを覆される。


「まさしく天敵だね、君は……。僕の」


 能力を使うか迷ったが、目の前の存在はそういう次元ではない。

 まだいくつか手は隠してはいたが、途端に馬鹿らしくなる。

 目の前の途方もない存在を見て、努力も、策も、才能も、全てが無駄だと思える。


「酷いリアクション」


「……?」


「私と相対する人はみんなそう。殺されると思って、死を甘んじて受け入れようとするの。酷いと思わない?」


 にこりと、1周目は微笑う。

 その笑顔は邪気が無いのにどこか不気味だ。

 殺気は無い。隙だらけ。

 なのに、殺せる気がしない……。

 今まで見てきたどんな人間とも違う、歪さ。


「僕を殺さないのかい?」


「それは私が決めることじゃないから」


 《満天星夜》――マンテンセイヤ――


 空に星々が煌めく。

 そして1周目から白きジェネシスが湧き出していく。

 ジェネシス回復の能力を2周目が発動したのか。


「何かを死ぬほど憎んだり、殺したり殺されたり、期待したり裏切られたり。あなたもそういうくだらない柵から抜け出せると、いいね」


 1周目はそう言い残すと、すぅ、と気配が消えていく。

 代わりに、白きジェネシスをゆらゆらと身体から発しながら、元のシラユキセリカが目を開き、僕をじっと見据える。


「――――“終わり”にしよう、透」


 そう、シラユキセリカは言った。



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