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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第16話 White≒Clear①【白雪セリカ(4周目)視点】

 

 …………っ!?


 透を突破し、時計塔を目指すが、背後から凄まじい“白”の気配。

 忘れもしない、屋上へと導いた暴力的な濃度のピュアホワイトジェネシス。


 ――――この気配は、アルファ!


 何故ここに? このタイミングで?

 錯乱する思考を掻き消すように、声が響く。


(後ろではなく“前”に集中して。”手筈“通り、2周目の蘇生は私が、時計台はあなたが)


 3周目からチャネリングを受け取る。


 ――――2周目は“まだ”終わってない


 3周目の言葉の意味。文字通りそのままで、2周目は死んでない。

 どうやって蘇生するのかまでは分からない。説明を受ける時間がなかったから。

 でも、何度死んでも殺されても食らいつく私達が、そう簡単に終わる訳が無い。それだけは確かだ。

 時計台を破壊し、タイムリミットをリセット。

 サマエルを2周目に託し、私と3周目で透を討つ。

 これが3周目が示してきた作戦だ。

 二手に分かれ、私は時計台へ向か―――


 パァン、と。

 空間を引き裂く銃声が響く。そして。


 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――

 《右往左往》――ウオウサオウ――



「……っ」


 背後を警戒しながら前を目指すと、弾丸と透が交互に入れ替わりながらすさまじい速度で私を追い越して時計台と私を隔たるように現れる。

 弾丸は時計台を弾いて消し飛んだ。

 いつの間に……銃を……。

 位置を入れ替える能力、まさかこんな使い方が……っ。

 弾速を利用し、弾丸と自分の交互に入れ替え続けることで加速。

 その速度があれば、弾丸の速度で直線上を駆け抜けることができる。

 限られた距離しか入れ替えられない能力でも、連続して使えば長い距離を一瞬で入れ替えながら加速できる。

 単一能力で、この応用力。認めたくないけど、これが透。

 透という……男……っ。


 透が私の前に立った瞬間、《明鏡止水》と《全身全霊》が切れる。

 そして蝕むのは、強烈な眠気。

 ジェネシスももう限界だ。これ以上は……もう。


「君はよくやったよ。僕を本気にさせたのは君だけだ。何かご褒美をあげたいところではあるが、生憎僕にも余裕が無くてね。済まないが、これで終わりだ」


「……尽きてもいい。全て、尽きてもいい。だから、だから!」


 ジェネシスの全てを透と時計台に叩きつけてやる!

 そうすれば、あとは1周目……が……?


「言っただろう、これで終わりだと」


 透の声が間近で聞こえる。


「かはっ……」


 口から零れるのは……血?

 透は黒い剣で私の胸を貫いていた。


「ジェネシス切れを起こせば、また変なのが湧いてくるんだろう? 何が起きても対処できるよう、この手で直接君の命を奪うことにするよ」


「……」


 朦朧とした意識。定まらない視界。

 でも、それでも私は――――


 《天衣無縫》――テンイムホウ――


 すり抜ける。透の刃を、透の身体を。

 この時計台を、破壊する。

 眠気と苦痛とで何もぼぉっとする意識の中、私は時計台に《白雪之剣》を――――


「……敵ながら戦慄するよ。その不屈の闘志にね。だが、無意味だ」


 パチンと透が指を鳴らすと、時計台が消える。

 振り返ると、透のすぐ背後に時計台があった。


「必死になっていたようだが、この時計台は位置を自在にズラせるんだ。そう思わせない為に、その前提で行動していたわけだが。敵を騙すにはまず味方よりも自分からだというのが、持論でね」


 落ち着こう、落ち着いて《聖女抱擁》を……。


「まだ足掻くか」


 透に両腕を切り落とされる。首を落とされなかったのは、なんでだろう……。

 なんて、どうでもいいことをぼんやり考えてしまう。

 でも、もう、完全にガス欠だ。全てのジェネシスを使い切った……。


「終わりだ、シラユキセリカ」


 《七転八起》――シチテンハッキ――


 《必中魔弾》――ヒッチュウマダン――


 ゴォン、と。時計の鐘の音が鳴る前に。


 時計台が粉々に砕け散った。


「2周目、か。やはり不死に近い能力を持っていたか。嫌な予感がしたので、《審判之剣》を消費したが、3周目が引き抜いたようだね」


 朦朧とする意識の中、透の声が響く。


「だが、それでも“終わり”だ。君が本体なのだということは察している。君を討てば、この面倒な運命も終わるんだろう?」


「それはどうだろう? キルキルキルル」


 透の剣がもう一度私の胸を貫こうとしたとき、私なのに私じゃない声で誰かが言った。


 黒き剣は、空中に現れた“もう一つの黒”の剣に止められる。


「お前は……誰だ?」


「名前はまだ無いかな」


 その言葉を最後に、私の意識は掻き消えた。


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