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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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幕間⑱ 似て非なる者①【シスター→アルファ視点】


 セリカと透が死闘を繰り広げる中。

 私はその場所に立ち尽くしていた。


「……なん、なの。これは……」


 アンリと別れ、セリカの元へ向かった私は呆然としていた。

 五芒星の黒き結界。何者も寄せ付けないジェットブラックジェネシスの結界が、世界を断絶していた。ジェネシスが濃すぎて、中が見えない。

 セリカは恐らくこの中にいる。でも、入れない……。

 何度か私は能力をぶつけて切り開こうとしたけど、この結果は強すぎる。

 自分自身の弱さを思い知らされるかのような、存在の格の違いを見せつけられるような劣等感を刺激される。

(アルファ、これはどうすれば……)

(……)

 アルファですら呆然としている様子。

 万事休す……なのか? ここまで来て?

 この結界を突破できなければ、セリカは死に、Gランクプランは崩壊する。

 私が生きる理由が、また消えてしまう。

「……私は」

 目の前の黒きジェネシスは全てを拒絶する最悪の力だった。

 何をどう足掻いても、それら全てを嘲笑うような冷酷。

 これが……透の力……。


「――――遅かったですね、シスター」


「!?」


 いつの間にか、目の前に“百鬼結”がいた。


「……アンタは、デルタ? 私達を見限って、新しい器に乗り換えたアンタが、何しに来たの?」

「ご挨拶ですね。私はただ……」

「アンタは何がしたいの? 方向性が無い死体である私たちの中でも最底辺のアンタが……」

「ですから私は……」

「消えなさい。自分を見ているようで、不愉快だから」

(シスター、私が出ます。デルタさんとは私も話したいことがあるので)

(ただでさえ、時間が無いのに! 裏切り者のこいつと話すことなんて……)

(デルタさんは私の半身です。ついに相互理解は叶いませんでしたが、これが対話の最後の機会かもしれないので、交代してください)

(ちっ……。好きにすれば?)

 シスターを説き伏せ、私はシスターから肉体の主導権を奪い交代した。


「――――デルタさん、数日ぶりですね」


「アルファですか。シスターの性格、少し変わりましたね。あんなに嚙みついてくる人格ではなかったのに」


「私“達”は方向性を与えられたので、生のベクトルで在り方が変わったんでしょう。でも、あなたもかなり変わったように見えます。器が違うからというのもありますが、今のあなたからは明確な“意志”を感じます。新しい器の影響でしょうか?」


「……」


「それで、デルタさん。私達にはあまり時間が無いのです。思い出話をする仲でもないですし……。あなたはセリカの敵、味方、傍観者、その内どれなのでしょうか?」


「私は――――」


 意思表示というものと無縁の亡霊人格デルタさんは、起伏の無い表情のまま平坦な声色で私の問いに答えるべく唇を開いた。


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