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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
324/355

幕間⑮ 正義の成れの果て②【白雪セリカ(3周目)視点】

 

 三層バリアを張り巡らしながら、透に向かい正面から突撃する。

 この距離、既に透の間合いだ。

 いつどこから来るか分からない《紆余曲折》は、《気配察知》では間に合わない。

 しかも《気配察知》で分かるのは“何となくこの方向”という感覚止まりなので、情報としての精度が低い。不可視の一撃、速すぎる一撃に対してはアテにならない。

 《気配察知》だけを情報源にすれば、致命傷を受ける可能性すらある。

 結論として、《紆余曲折》への対抗策は。三層バリアを張ることで、三段階の察知できるようにしておくことが必須となる。

 私が地上を走る様子を、不気味な無表情で透は漆黒の翼をはためかせながら浮遊し、見下ろしている。

 透が本気になった時は、たいてい凍り付いたような無表情か、激情と狂気に身を委ねた表情になる。

 現状、透は私を最大脅威として認識している。


 ――――そう、それでいい。


 私の心理誘導は透にハマっている……。

 この作戦の一番の肝は、そこにある。

 とにかく、時間がもう無い。そして、ジェネシスも……。

 だが、ジェネシス切れを恐れていれば負ける。

 そして、背中に感じる異様な圧力も敢えて無視する。

 さっきからサマエルの視線を感じるが、4周目を信じるほかない。


 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《空間圧縮》――クウカンアッシュク――

 《空間圧縮》――クウカンアッシュク――

 《空間圧縮》――クウカンアッシュク――

 《空間圧縮》――クウカンアッシュク――


 揺らめく、三層バリアの炎。

 方向性は……“全方位”から。

「――――っ」

 《快刀乱麻》では間に合わない。これは――――


 《天衣無縫》――テンイムホウ――


 すり抜ける異能力を発動すると同時に、何かが弾けるような衝撃音が鳴り響く。

 三層バリアが何かに握り潰されるかのように凝縮した後、消滅した。

 《天衣無縫》を発動していなければ……私もああなっていた、ということ。


 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――


 こちらが本命か。三層バリアを潰した後、不可視の一撃を入れに来る。

 三層バリアを構築している猶予は無い。なら。


 《秋霜烈日》――シュウソウレツジツ――


 ジェネシスの消費が激しいが、惜しむ余裕は無い。

 身体から白炎を発し、全方位へ放出。

 不可視の一撃の方向を読みつつ、透の方を一瞥する。

 透は翼をはためかせ、一直線にこっちに突っ込んできている。

 《生殺与奪》でやる気か。


「キルキルキルル」


 《救世之盾》――キュウセイノタテ――


 透が四角い黒き盾を召喚。右手に剣、左手に盾を持ち、透は向かってきている。

 中距離、近距離の同時攻撃。

 そして《救世之盾》は完全に未知の能力。

 私たちを出し抜き、温存した能力の一つ。

 そして、それすらも“心理誘導”。

 本命は恐らく《鐘楼時計》。これも未知の能力。

 想像でしかないが、あの10分のカウントダウンがゼロになれば、私たちは終わる。

 というよりも。4周して殺した透が、なおもまだ未知の能力を複数温存していることが異常なんだ。私たちのループを“利用”するその狂気じみた知性と精神性には戦慄すら覚える。

 今これらの全ての攻撃。

 私から時間間隔を奪う程の負荷をかける為の、全てがフェイクであり全てが本命の幾重にも張り巡らせた攻撃と見ていい。


「……っ」 

 確実に詰ませに来ている。だが、透を追い詰めているということも事実。

 《天衣無縫》を使うべきではなかった。

 透は《天衣無縫》の発動切れする時間間隔を4周目を情報源に、見切っている。


 ――――だが、“白雪セリカ”という存在に対する透の情報源は、飽くまでも4周目のみ。なら、そこを突けばいい。

 私の能力は殆ど4周目と被っている。でも、“使い方”と“応用”に関してはまるで違う。そこを誤認しているのなら、透を上回れる。


「……」

「……」


 透と視線が交錯する。

 透の目からは何も読み取れない。けれど、それは相手も同じ。


 次の攻防で、透も、そして私もお互いに相手を詰ませに行く。


 ただ、それだけだ。


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