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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
320/361

幕間⑪ White&White②【白雪セリカ(4周目&3周目)視点】


(――――以上よ)


 3周目が語り終わる。

 3周目が語った作戦は突破力はあるけど、その分ハイリスクなものだった。

(……上手くいくとかそれ以前に、できるの?)

(Gランク成就よりは“簡単”なはず)

(……そ、それは)

(では、チャネリングの上位互換である『継承』をする。時間がないので、今回は『風船の剣』のみを伝える。サマエルを1分凌いでくれればそれでいい。あとは私がやる)

(私は、どうすればいい?)

(眠るように静かに、意識を深く集中させればいい)

(分かった)

 背中越しに、3周目のジェネシスと記憶が伝わってくる。

 視界にノイズが走り、脳裏に別の光景が浮かび上がる。


      ♦♦♦


「……で、できた。これが……『風船の剣』」

 ジェネシスを用いて剣の形を生成。形態化。但し、それだけではない。“空洞”を意図的に作る。ジェネシスを風船のように空洞を覆う剣の形状に……。

 “私”は『風船の剣』を具現化し、そのまま倒れた。『風船の剣』はその拍子に霧散してしまう。10時間近く、ほぼ休憩する暇もなくこれを続けてようやく会得できた。

「はいはい、立って立って」

 パンパンと2周目が手を叩き、地面に崩れ落ちる私を叱咤している。

「……はぁ、はぁ」

 地面に崩れ落ちている私のほっぺをつねりながら、2周目が真顔で責め続ける。

「痛くない痛くない、この程度で何苦しんでんの? 甘えないでね」

「……この訓練に、意味なんてあるんでしょうか? サマエルという存在が現れる気配はないので、『風船の剣』などよりも透に備えた方が」

「『継承』は同じ色でしかできないからね。私が黒で、君が白である限り君に頑張ってもらうしかない」

「し、しかし……」

「この程度のことで弱音ばかりの雑魚に、透と渡り合えるって、それ本気で思ってるの?」

「……」

「やらない理由ばっかほざく暇があるなら、1秒でも早く立ち上がって気概を見せてみれば? まだまだやることは山積みなんだしさ?」

「2周目、あなたは何故……そんなに“厳しい”んですか?」

「厳しくしてるつもりはないよ。私が厳しく見えるなら、それは単純にあなたが“甘い”だけ。まぁ、それでも敢えてその質問に答えるなら、負け続けたからだよね。失敗は成功の母らしいけど、失敗しかない人生だった場合は何の慰めにもならない。あのことわざって、所詮は勝者が敗者を見下して気持ちよくなる為の戯言だよね。薄っぺらいし反吐が出る」

「あ、あの……ほっぺつねるのやめてもらえますか?」

「立ち上がったら放してあげる」

 ニッコリと、2周目が邪気が無いのにどこか怖い笑顔を浮かべる。

「……やります」

「うん、どうでもいい決意ありがとう。決意表明とかいう頑張ってますアピールはどうでもいいから、さっさと結果を出そうね? じゃ、次の修行しよっか?」

「……」

 3周目は青ざめた表情のまま立ち上がった。


      ♦♦♦


 

(……今のは?)

(成功したようね。今のは私の記憶と感覚を共有した。今のであなたでも『風船の剣』の構築方法を習得した筈)

 た、確かに……。覚えていないのに、分かる。

 『風船の剣』の使い方も、それをどうサマエル戦に活かすべきかも。

(それから、“これ”も渡しておく)


 《以心伝心》――イシンデンシン――

 《天羽々斬》――アマノハバキリ――


 私の中に、能力が入ってくる。

 《以心伝心》は能力を貸与する能力。3周目は私に何かの能力を渡してきたらしい。

(……今のは?)

(私にとっての三つ目の剣。敢えて引き継がなかったけど、『運命の環』は狂い始めている。だから、もし、全ての希望が潰えた時は……その能力を使いなさい)

(全ての……希望……)


(正義に夢も希望も必要無い。必要なのは、“全て”の悪を殲滅する覚悟と決意だけ。これは、ただその意思を具現化するだけの能力。多くを語らずとも、発動すれば分かるはず)

(……っ)

(さて、体感で残り2秒。ギリギリね。じゃあ、“次”のタイミングの時また合図するから)

 3周目は無理やり話を打ち切り、私も慌てて作戦に頭を切り替える。


 スローモーションの世界は無慈悲にも終わり。


 ――――時の流れが戻り、サマエルのクリアジェネシスレーザーが眼前に迫る。


《天羽々斬》は元々はボツにしていた能力だった、という裏話。

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