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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
319/356

幕間⑩ White&White①【白雪セリカ(4周目)視点】

 

「……フッ、つくづく恐ろしいね。君たちは。まだ“何か”ある表情だ」


 透は黒き翼をはためかせ、ゆっくりと近づいてきながらそんなことを言う。

「生憎、お前たちには相当鍛えられたから」

 3周目が言い返しつつ、私と3周目はそれぞれの背中と背中を合わせて、位置を入れ替える。

 私の正面にはサマエル、3周目の正面には透。

 これで死角は消えたけど、挟み撃ちであることに変わりない。

(4周目。《明鏡止水》を“同時”に使う。コンマ1秒でもズレてはいけない。タイミングを合わせて)

(……そんなこと、急に言われても)

(私たちは元は“同一”の存在。つまり秒数感覚も“同一”のはず)

 確かに、秒数感覚には身体代謝等の個人差があると聞いたことがあるけど……。

(これから私が3秒のカウントダウンをするから、ゼロになるタイミングで《明鏡止水》を合わせる。そうすれば同じ時間軸の中で行動できる。あとの指示はその時に)

「何をするつもりか知りませんが、させませんよ?」

 サマエルが右手を振りかざし、クリアジェネシスのレーザー光線を放ってくる。いつの間にこんな技を……っ。

「そうだね。そろそろ終わりにしようか」

 透が大量のジェットブラックジェネシスを右手から螺旋状に放つ。『黒の矢』を生成しながら、上空から射出。

 この距離からでも分かる。今までの『黒の矢』と比べて、これはどの一撃よりも重い。

 今までの分散する雨のような攻撃と違い、一点突破に的を絞った矢。しかもクリアジェネシスに消滅させられないよう、上空からの軌道というのが相変わらず抜け目ない。

(動揺しない。この一撃への対処は《明鏡止水》後にする。今はカウントに集中して)

(……分かった)

 迷ってる暇は無い。

 2周目の死因については、完全に私のヘマだ。

 自分を信じて、やるしかない。

 眼前に『黒の矢』と透明なレーザーが迫りくるけど、無理やり心を落ち着かせ集中する。


(3、2、1――――)


 《明鏡止水》――メイキョウシスイ――

 《明鏡止水》――メイキョウシスイ――


 全てがスローモーションになる。

 『黒の矢』とレーザー光線の動きも緩やかになる。

 これなら、ちょうど《明鏡止水》が切れるタイミングと同じくらいに間合いに入る。


(成功ね)

(成功……したの?)

(タイミングを重視し、敢えて《全身全霊》は使わなかったから、会話はこのままチャネリングを使う)

(この後、どうすればいい? “回線”を繋ぐとか言ってたけど)

 《全身全霊》を発動していないので、思う様に身体を動かしても3秒遅れるせいで、唇を動かしての音の会話ができない。

(その前に、話すことがある。なぜ2周目を死なせることになったと思う?)

(え?)

(確かに透が能力の多くを温存していたことは私たちの予測の範囲外だった。それでも、2周目が死ぬほどの誤算ではなかった筈)

(で、でも、それならもっと前の段階であなた達は姿を現して情報の共有をある程度しておくべきだったんじゃないの? いくら私の成長を促す意図があったとはいえ)

(『運命の環』のロジックツリーの大まかな流れは、ある程度守る必要があった。情報を引き継ぎ過ぎれば、未来が大幅に変わる可能性があるから)

(でも失敗してる)

(『運命の環』が破綻する場合は、4周目である本体が死亡フラグを避けられなかった時。そしてそれはまだ発生していない)

(でも、他にもっとやりようは……)

(それに関する文句は2周目に言って欲しい。『運命の環』のロジックツリーを作ったのは2周目と結だから)

(……2周目に文句って。もう死んでるんじゃ?)

(2周目は“まだ”終わってない。……あまり時間もない。最初の質問に戻る。なぜ2周目を死なせることになったと思う?)

(なぜ……)

 あの時の状況を振り返る。

(透の《右往左往》による《生殺与奪》の連続攻撃が完全に予想の範囲外だったから)

(……時間がない。この際、ハッキリ言いましょう。あなたは、2周目の指示を守らなかったのでは?)

(指示……)


 ――――“恐れる者”に透は超えられない。そしてGランクもまた届かない。失敗を恐れることはリスク管理として重要だけど、恐れるだけの者には何も掴めない。私が全責任を負うよ。失敗してもいいから、思いっきりやってきて。


(私は……。……失敗を恐れて動くのが遅れた)

(そう。その“恐れ”を透は見逃さなかった。あなたが恐れれば恐れる程、勝率は下がっていく。確かに恐れることで透の罠を回避できることもあるでしょう。但し、罠以外でその恐れに飲み込まれれば今回のように付け込まれる要因にもなる)

(つまり、透を恐れるなってこと?)

(恐れてもいい。但し恐れ“過ぎ”ないこと。その境界線を見極めなさい)

(境界線……)

(止まるべき時は止まり、動くべき時は動く。アクセルが強すぎても駄目、そしてブレーキが強すぎても駄目。伝わった?)

(うん……)


(OK。もう時間は半分もない。反省会は終わり。作戦を伝えるわ)


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