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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第15話 Clear≒White㉛【白雪セリカ(4周目)視点】

 必要なのは、失敗を恐れないこと。


 白の矢の作成方法を追加変更。《諸刃之剣》ベースだけではなく、《白雪之剣》ベースでもジェネシスを形態化し、矢の形に。

 《白雪之剣》はジェネシスを無効化する特性があるけれど、自分自身のジェネシスは例外であることは今までのことで分かってる。

 この特性を白の矢に応用。

 同時に2本の白の矢を作成する。

 1本目は《白雪之剣》を埋め込んだ矢。

 2本目は《諸刃之剣》を埋め込んだ矢。

 その2本を同時に、丁寧にけれど速度を意識して作る。

 ……作成速度が遅い。2本同時の作成はかなりの集中力が必要だった。

 歯がゆい思いを噛み殺し集中するも――――


 ……時間切れが近い。


 集中力と動きを加速させる能力が切れるタイミングが近い。

 再発動しても動きはどうしても遅くなる。それを見逃すほど透は甘くない。この一度の発動タイミングで全てを終わらせる必要がある。

 透にこれ以上考える隙を与えてはならない。


 《聖女革命》――セイジョカクメイ――


 白き鉄鎖を具現化。

 無尽蔵な大量の鎖を具現化するのではなく、一本のみシンプルにジェネシスを集中して長めの形状にし、具現化。

 2本目の《諸刃之剣》ベースの白の矢の矢尻の部分と、私の右腕に白の鉄鎖を強く結び、繋ぐ。ぐるぐる巻きにするのではなく、鎖の末端を腕に、先端を矢尻に結んだので、殆どの部分は地面に散漫に転がっているような状態。

 “完成”した。

 鎖を自在に操れるほどの器用さは私には無い。

 2撃同時攻撃も難易度が高い。

 できないことを無理にするのではなく、確実にできることに死力を尽くす。

「すぅ……はぁ……」

 呼吸を深くし、意識を研ぎ澄ませ。


 一撃目。投擲。


 《白雪之剣》をベースとした白の矢が弾丸のごとき速さで空間を駆け抜ける。


 《紆余曲折》――ウヨキョクセツ――


 テレキネシスの能力が発動。やはり透は私の動きを読んでいた。


 ――――でも。その一手は悪手だ。


「……っ?」


 透の目が僅かに見開かれる。

 一撃目の白の矢は《白雪之剣》を刃とする矢だ。

 無効化する一撃目を《紆余曲折》では防げない。


 《救世之盾》――キュウセイノタテ――


 効果が未知の能力。

 黒きジェネシスの盾が透の前に現れる。

 一撃目の白の矢は貫通することなく黒き盾と衝突すると一瞬で消滅。

 《救世之盾》の効果は不明のまま。《白雪之剣》に無効化されながら相殺され、消滅したようだ。

 さすがは透だ。加速の能力を持たずして反応してくる。透は私の行動を読んでいる。

 でも。

 私は一撃目を見ながら既に二撃目の投擲体制に入っていた。


 二撃目。投擲。


 二本目の白の矢が空間を駆け抜け、透を目掛けていく。



 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《救世之盾》――キュウセイノタテ――


 想定外の事態が発生する。

 一つの能力を同時に発動する能力。《多重展開》をフル活用したのだろう。

 透は4つの黒き盾を具現化した。

 前後左右、全ての方向に隙なく配置。

 これもまた、透の切り札だと確信する。

 《救世之盾》は不気味だ。何が起こるのか全く分からない。

 けど、盾を四つ並べても、どうしても“隙間”はある。


 ――――なら。


 ――――“そこ”を狙う。


 2周目は私の矢を曲げた。

 なら、2周目のサポート無しでも同じことができるはずだ。

 《聖女革命》の鎖を曲げれば、軌道修正ができるのだから。

 イメージしろ。先輩、花子、ゼロの鎖を思い出せ。

 そして2周目の曲げる力を。


 右腕に巻き付けた鎖を腕を曲げて引き付け、軌道をイメージで変更する。


 四つの盾の隙間を縫――――


「――――っ」


 《明鏡止水》と《全身全霊》が同時に解ける。

 発動時間を使い切ったらしい。……でも。


「――――ッ」


 透から苦悶の気配。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 極限の集中力を使い果たし肩で息を吐きながら、全身から血が噴き出す。

 つまり、成功だ。

 間一髪、軌道修正は間に合い、透に一撃入れることができたらしい。


「《空白空爆》封印。相殺指定、《守護聖盾》」


 《聖女抱擁》を発動し、全身の傷を癒す。

 8つ目の能力の封印に成功する。

 《空白空爆》は確か、見えない爆弾の能力。大当たりとは言えないまでも、厄介な攻撃を一つ排除できたことを喜ぶべきか。

 でも、本番はこれからだ。

 私の残りの能力ストックは……


 ①《白雪之剣》(シラユキノツルギ)

 ②《諸刃之剣》(モロバノツルギ)

 ③《聖女抱擁》(セイジョホウヨウ)

 ④《明鏡止水》(メイキョウシスイ)

 ⑤《天衣無縫》(テンイムホウ)

 ⑥《粉雪水晶》(コナユキスイショウ)

 ⑦《聖女革命》(セイジョカクメイ)

 ⑧《守護天使》(シュゴテンシ)

 ⑨《残留思念》(ザンリュウシネン)

 ⑩《一騎当千》(イッキトウセン)

 ⑪《白夜月光》(ビャクヤゲッコウ)

 ⑫《全身全霊》(ゼンシンゼンレイ)

 ⑬《色即是空》(シキソクゼクウ)


 ……これだけだ。

 いよいよ、失えない能力ばかりで手詰まりに近い。

 ここから先が、一番の正念場……。


「……っ」

 ぐらりと、視界がかすむ。

 もう、ジェネシス切れも近いというの……?

 《満天星夜》無くして、ここから先どうすれば……。


 私の動揺を見透かすかのように、透は冷たく微笑した。


 そして、透の足元で倒れていた2周目の指先がピクリと動いた。


 ……死後痙攣? いや、違う。あれは単なる痙攣じゃない。


 まだ、終わってない。

 2周目は1周目に及ばないものの、透に“最強”と言わしめた存在。

 私は絶望しそうになる心を奮い立たせ、再び透と向き合う。


 ――――“何か”が起こる。そう確信を深めながら。


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