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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第15話 Clear≒White㉗【白雪セリカ(4周目)視点】

 

 ……透、何を考えている?


 私は大器晩成型だ。今ある手札で全て何とかし、活路を見出すことしかできない。

 でも、逆に言えば。

 選択肢を最小限に絞り込んで最適解を叩き出せるということ。


 《明鏡止水》――メイキョウシスイ――


 深く思考する。かつての窮地を思い出しながら、私はふとマザーの姿が頭をよぎった。


    ♦♦♦


 マインドコントロールの解き方は様々あるけれど、唯一無二の弱点と言ってもいい方法が、一つだけある。


 ――――それは、“誘導の逆算”だ。


 相手が心理誘導していると理解した時点で、相手の心理誘導の終着点と、その過程の全てを逆算して相手の本質を突き止める。


    ♦♦♦


 違う、これだけだと足りない。

 透は今、私をコントロールしようとしていない。

 条件を満たしていない。だから逆算できない……いや、それも少し違う。

 透の行動から、逆算するんだ。ひたすら思考に没頭し、自問自答に頭を切り替える。

 透の行動から何を逆算する? 透が何をしたいかは決まってる。私を殺すことだ。

 私を殺す為に何かをしようとしている。

 中距離戦から切り替えたのは何故?

 その方が私を確実に殺せると判断したからだ。

 ならそのきっかけは何?

 さっきの“直線で動く白の矢”と、“二度曲がる白の矢”で二回透を貫いたこと。

 なぜ一度目の“直線の白い矢”で戦略を変えなかったの?

 まだ透の中で“白の矢”の攻略方法を思いついていなかったから。

 ということは、今戦略を変えてきたということは何を意味する?

 それは、“白の矢”の対策を思いついているということ。

 歩いて近づいてきてる理由は何?

 それが“白の矢”の対策に繋がると透が判断したからだ。

 なら、私はどうするのが最善だと思う?

 ……結論を出すにしても、情報が少な過ぎる。

 ただ一つ気になるのは、透が私の白の矢に対するアプローチは《救世之盾》だということ。あの能力は不気味だ。根拠は無く、直感的なものだけど、あの能力からは破滅を感じる。


 《明鏡止水》の効果が切れ、私の体感時間は元に戻る。

(2周目、《救世之盾》の効果を知ってる?)

(ごめん。初見だね、あれは。あと《鐘楼時計》も未知。3周目も知らない筈だよ)

(……初見? 透は過去の周回で全力を出してないのかもと思ってたけど、そっか。じゃあ、今ので確信に変わった)

(……透は敢えて、手加減して過去の周回で殺されたってこと?)

(私たちのループ能力を看破したのであれば、敢えて手の内を晒す必要は無いから。過去周回で殺されたのにも関わらず、未知の能力を隠していたとしか考えられない)

(…………)

(透はやっぱり、恐ろしいね。自分の命すら平然と捨てながら、私たちを心理誘導してくる)

(なんで……透のことをそこまで深く理解できるの?)

(別に、大した話じゃないよ。理解しようとしたから、としか言えないかな)

(理解……しようと……?)

 2周目は何か思うところがあったのか、呆然としている。


 《明鏡止水》――メイキョウシスイ――


 再び体感時間を延ばし、思考に没頭する。

 ……“白の矢”だけじゃない。《諸刃之剣》も看破された可能性がある。

 《諸刃之剣》の弱点は、相手の能力を封印する為にこちらも相当数の能力ストックが必要だということ。

 透の能力を封印した数は7つ。

 《狂人育成》を、《起死回生》で相殺。

 《証拠隠滅》を、《一蓮托生》で相殺。

 《主観盗撮》を、《気配察知》で相殺。

 《帝王抱擁》を、《聖域結界》で相殺。

 《千波万波》を、《飛翔蒼天》で相殺。

 《聖者抹殺》を、《半死半生》で相殺。

 《絶対不死》を、《秋霜烈日》で相殺。

 私はアンリに《快刀乱麻》と《以心伝心》能力を貸している。そして《死者蘇生》は喪失しているので、使うことも代償にすることもできない。

 現存する私の能力は、これだけだ。


 ①《白雪之剣》(シラユキノツルギ)

 ②《諸刃之剣》(モロバノツルギ)

 ③《聖女抱擁》(セイジョホウヨウ)

 ④《明鏡止水》(メイキョウシスイ)

 ⑤《天衣無縫》(テンイムホウ)

 ⑥《粉雪水晶》(コナユキスイショウ)

 ⑦《守護聖盾》(シュゴセイジュ)

 ⑧《聖女革命》(セイジョカクメイ)

 ⑨《守護天使》(シュゴテンシ)

 ⑩《残留思念》(ザンリュウシネン)

 ⑪《一騎当千》(イッキトウセン)

 ⑫《白夜月光》(ビャクヤゲッコウ)

 ⑬《全身全霊》(ゼンシンゼンレイ)

 ⑭《色即是空》(シキソクゼクウ)


 私の能力ストックは、残り14個。そして、代償にすることができない能力が多い。

 どの能力も一時的とはいえど、透戦で失うには痛い、あるいは絶対に失えない異能力ばかりだ。重要度が低いのは拳銃を失ったので使う機会が無い《守護天使》と、あまり使う頻度が少ない《聖女革命》ぐらいか。

 “これ”か……。

 透が《諸刃之剣》を掌握したのだとしたら、ここを必ず突いてくる筈。

 けど、どうやって?

 それが見えてこない。そこだけがブラックボックス……。

 一つ言えるのは、透の未知の能力《救世之盾》がカギを握っているということ。

 透はあといくつ能力を保有しているのか。2周目が“未知”の能力があると言った時点で、透の所持能力の総数を把握することができないことが確定した。

 けど、透も確実に追い詰められている筈。私たちはお互いに苦しめ合うことでしか分かり合えない関係。私が苦しいということは、透もまた苦しい筈なんだ。問題なのは……。

 攻めに行くか、守りに切り替えるか。

 あるいはその選択肢そのものが“罠”か。


 《明鏡止水》の効果が切れ、結論は依然として出せないまま。


 ゴォン、と鐘が鳴る音が響き渡る。

 私の逡巡を嘲笑うかのように《鐘楼時計》は『6』の数字を示した。


新年あけましておめでとうございます。2025年も多くの人々にとって激動の年になりそうですが、宜しくお願い致します。

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