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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第2話 インモラル・エクスタシス⑤

《監 傀 》――カン  カイ  ――

「先輩は、私が守る!」

「――――っ」

俺は異能を発動しようと黒き意識に身を委ねかけたその時、セリカの声が俺を正気に戻す。

「はぁっ!」

セリカは声を荒げ、俺が貸した剣を振るう。

キィン! 赤染の剣をはじき飛ばし、危機を脱する。

「はぁ、はぁ……」

セリカは息を荒げている。必死だったのだろう。必死に息をするセリカがカワイイ。

 「セリカ、お前……」

 「……ふぅん」

 少し興味深そうに、赤染が目を細めセリカを見る。

 「ただの雑魚だと思ったけど、案外ダークフォースかもね、君。私の邪魔をできる人間、か」

 「そこをどいて、生徒会長。先輩の邪魔をするなら、誰であろうと私が許さない」

 「生徒会長? 誰が? もうそんな役割は終わったわ。内申点、人望にもはや市場価値は無い。ここで価値あるものは強さだけ。生徒会長などという役割を演じるのももう終わり。赤染財閥の令嬢として演じるのももう終わり。私は今まで全てを演じてきた。だから、かしらね。自分自身、というものがよく分からない。でも、今、この瞬間、私は私を感じていた」

 「な、何を言って」

 「あなたには理解できないでしょうね。彼氏がいて、何も考えずのどかに幸せに暮らせているあなたには。本当の自分を見失った私の気持ちなんて。でも、今、この瞬間だったら、私は私を取り戻せるかもしれない」

 赤染は目を爛々と輝かせ、何かに魅入られたかのように自分の両手を見つめている。危険な顔だが、だからこそ魅力的だ。赤染アンリは、やはり俺と同類……。

 「…………な、何を言っているの。理解、できない」

 セリカは不可解そうに眉を顰める。持つ者は持たざる者を理解できないのだろう。

 「私は私を感じたい。百鬼君、あなたなら私を満足させてくれそうなの。だから、逃がさない。あなたはここで殺すわ。その命、奪ってあげる。うん、決めた。初めて自分で決めた気がする。ああ、なんてキモチイイ……」

 赤染はぼぉっと夢見るような空ろな瞳で、夢見心地に微笑む。

 と、同時。スカーレットジェネシスが赤染を多い、蠢く。異能を使う気か?

 ゾッとしたが、妖艶だ。思わず魅入る。

 全てを偽ってきた女が、狂気という自由に身を委ねる姿。

 それはどこか背徳的で、美しかった。

 まるでこれは羽化だ。アゲハチョウが、醜いサナギから覚醒するような、そんな美しさ。

 「あいにく、俺はまだ童貞なんだ。だから、お前なんかには奪わせない」

 俺は減らず口をたたきながら、意識を研ぎ澄ませる。

 俺の異能は、使いどころ次第では最強だが、戦闘向きじゃ無い。

回避のみに専念し、隙を見つけ次第その首を撥ねてやる。

 赤染アンリを殺す。成功率は低い、が、やるしかない。

 俺とセリカの邪魔をするなら、誰であろうと許さない。どんな手を使ってでも消す。

 赤染アンリが誘うように唇から僅かに舌を出す。舌先にジェネシスが集約し、

 《百花繚乱》―ヒャッカリョウラン―

 ふっ、と赤染が息を吐く。

 花火のような巨大な蜘蛛の巣が複数咲き乱れる。全部で、七つ。スカーレットジェネシスが鮮やかに咲き乱れる。そして、それは俺を標的とし、くるくると回転しながら真っ直ぐに向かってくる。

 ――――回避、不可能。

 そのあまりの巨大さ、そして幾重にも編み込まれた繊細な糸、そして何より、量。これほど規模の大きい攻撃があり得るのか? 規模だけなら花子を上回っている。

 そして、こいつ。全校生徒をこの場でミナゴロシにするつもりか? あまりにも躊躇が無さ過ぎる。やはり、赤染アンリは特別だったのだ。何をさせても優秀。ジェノサイダーとしても、優秀。こいつが間違うこと。それ自体があり得ないのだろう。

 「先輩、ここは、私が」

 俺が絶望していると、セリカが安心させるかのように唇を開く。

 「こんなに簡単に異能を使うんだ。それがどういう結果を招くかも、あなたなら分かってる筈なのに。人を簡単に殺せるあなたは、やっぱり間違ってる。だから、私はあなたを許さない」

 珍しくセリカが怒っている。声を荒げている訳では無いが、静かな声には迫力があった。

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