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±0  作者: 日向陽夏
第1章 殺人カリキュラム【前】 処刑斬首編
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第2話 インモラル・エクスタシス④

 赤染は妖艶に微笑んでいた。学校で見たことが無い黒い笑顔。こいつの、素の顔なんだろう。赤染には翼が生えていた。赤い翼だ。スカーレットジェネシスを形態変化させ、翼の形にしたのだろう。こいつも、“感覚的”にジェネシスの使い方を知っている! さっきの花子の攻撃を回避し、跳躍した時に発想していたのか。異常なまでに早い。その驚異的な適応力の高さが、今はただただ脅威だ。

 このままでは殺される。俺の手に武器は無い。セリカで両腕がふさがっている。とてもではないが、空中戦などできない。なら、取れる選択肢は一つしか無い。

 「こう見えては余計だ」

 俺は冷笑し、両足に集中していたジェネシスを背中へ移動させる。そして、

 「すぅ……」

 意識を集中する。イメージする。飛んでいるイメージ。

 具体的な生物をイメージしよう。烏が良い。

烏のように黒く、烏のように狡猾に。飛べ、飛べ、飛べぇぇ!

俺の背中から、真紅の翼が生えてくる。ジェネシスの形態変化に成功したのだ。

 「見よう見まねで、即興? まさかここまでとはね」

 赤染が驚いたように言う。

 「優等生のお前に賞賛されて嬉しいよ」

 「できるのにやらない劣等生のフリしてる人間って、ムカつくわね。ここで摘んでおかないと、絶対にあなたは厄介な存在になる」

 赤染が苦々しい笑みを浮かべ、距離を詰めてくる。両腕がふさがっていることに変わりない。状況は圧倒的不利。どうするどうするどうす――――

 「先輩、私も戦います。私が、先輩の目になる。だから、本気で飛んでいいよ。もう絶対に足手まといにならない」

 セリカが必死に提案してくる。俺は一瞬セリカの目を見る。

 「っ」

 息を呑む。強い目だ。さっきの無様に死にかけていた少女とは思えない、何かを圧倒するような風格がそこにあった。そうだ、この目だ。

 不覚にも思い出す。生き物を弄んで殺していたあの頃を。

 それがセリカにバレてしまった瞬間を。

 清く愚かでか弱いセリカもカワイイが、覚悟を決めたセリカの姿はどこか神々しい。

 「……分かった、赤染を倒すぞ」

 「うん。先輩は、私が守る」

 強く頷いたセリカからあふれ出すのは、ピュアホワイトのジェネシス。綺麗だ、と、危機感を一瞬忘れて魅入りそうになった。なんて、綺麗なんだ。

守る? セリカが俺を?

 どういう意味だ、それは。戦いで、という意味には取れない。だが、何故か確信できる。

 セリカは本当に俺を守ろうとしている。何から? 分からない。

 だが、俺が思っているほど、セリカは弱くないのかもしれない……。

 「先輩、剣を貸して」

 セリカにねだられるまま、俺は「キルキルキルル」と唱える。

 空中でセリカは俺のスカーレットの剣の柄をか細い両手で握る。

 「女の子を両腕で抱えながら勝負だなんて、ナメられたものね私も」

 赤染は軌道を読まれないためか、ジグザグに空中で神速で動きながら、突っ込んでくる。一撃で決めるつもりか?

 俺もジグザグに飛びながら、「先輩、少し右!」

 セリカの叫びに合わせ、軌道を僅か右へ逸らす。

 ――――ヒュン。

 何かが頬をかすめる。

 「惜しい」

 赤染の声で気付く。赤染の投げた剣が頬をかすめたらしい。

 お互いにジグザグに動いている完全未経験の空中戦で、的確に俺の首を撥ねようとする度胸と正確性が恐ろしい。やはりこいつは本物の化け物だ。

「キルキルキルル! キルキルキルル! キルキルキルル!」

赤染が何度も剣を具現化させては投擲してくる。回避行動に専念するが、一本を回避すれば二本目、二本目を回避すれば三本目、三本目を回避すれば一本目の直撃が免れない。軌道を先読みし、どう回避しても直撃するようシミュレーションもしているらしい。

「くっ!」

ぐるぐる回転する剣がすぐ目の前に迫る。避けられない。一瞬で死を悟る。どれほどシミュレーションしても回避しきれない。これは、当たる。

――――異能を使おう。

俺の思考の深い深い心の部分から、轟く惛い声。

ジェノサイダーになった瞬間、俺は俺という人間を理解した。してしまった。

異能のことも、その使い方も、その全てを。

……使うしか無い。できれば、やりたくなかった。

だって、この異能は…………俺の一番残酷な部分だから。

この異能を使えば、簡単にセリカをオモチャに出来る。殺人鬼にも、出来る。

カワイイ俺の天使。狂った姿も、きっとカワイイんだろうなぁ……。

セリカ、俺はずっと前から、お前のことを――――

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