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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第15話 Clear≒White⑱【白雪セリカ(4周目)視点】


 《全身全霊》――ゼンシンゼンレイ――

 《明鏡止水》――メイキョウシスイ――


 全ジェネシスを出力し、時間の流れをスローになるほど意識と身体を加速させる。

 ジェネシス切れになるリスクはあるけど、今の本気の透と長期戦をする方がリスキーだと感じる。

 さっきの一撃。咄嗟のものとは思えない程、洗練されていた。

 ジェネシス高出力の《千波万波》で私を応戦させて意識を誘導させつつ、上空から《紆余曲折》で地面に叩きつける攻撃から、《審判之剣》で刺して無力化し、最初の《千波万波》でとどめを刺し、且つ長期戦に備えて私の銃まで奪い取るというのを同時にやってのけたのだ。

 一切の無駄、慢心が無く、計算高く徹底した殺意とジェネシスの精度の高さ。

 狂っているようで論理的な透が本気で殺意を解放すると、一度の攻撃で何重もの攻撃を被せるようにしてくる。しかも、ダブルバインドなどの心理誘導まで攻撃に含めてくるのだ。これは……手強いなんてものじゃない。


 ヒコ助の凶暴な力。

 リリーの狂気の力。

 花子の殺意の力。

 いばら姫の計算高い力。

 ヒキガエルの狡猾な力。

 骸骨の悪意の力。


 それら全てを彷彿とさせる。

 彼らを集め、育て、まとめ上げ、王として君臨していた男……。

 それが、透だ。

 彼らの全ての闇を、悪を、力を、透はその心の内側に抱えているのだ。

 悪の覇道を説き、殺人鬼の王としてジェネシスを操り、人類を深淵の道へと導く者。

 SSSの、真理の破壊を齎す者……。


「シラユキセリカ……。お前に天使の輪があるということは、冒涜だ。僕への、そしてジェネシスへの……。お前は存在してはいけない……。Gランクなど、いや、Fランクですら、今となっては忌々しいだけだな……。ああああ、殺す。殺す、殺さないと……」


 透は相変わらず、苦しげだ。

 怖いしこの場を立ち去りたい気持ちに負けそうになるけど、3周目を置いて離脱なんてできないし、何より2つめの死亡フラグをここで放置するリスクは計り知れない。

 いや、何より……。


 ――――逃げられない。


 透の目は私だけを見据えている。

 絶対にここで殺すと決めている目だ。

 逃げる前に確実に殺される。

 むしろ、その弱気こそジェネシスを弱体化させ、私を破滅へ繋げる最悪の一手だと自覚すべきだ。


 《冥府魔道》――メイフマドウ――


 私の心を知ってか知らずか、透は未知の異能力を発動した。


 透から途方もない程のジェネシスが溢れ出し、空間そのものを飲み込んでいく。

 黒く、黒く、黒く……。

 空間の全てを黒に染め、やがて視界そのものが黒一色で埋め尽くされる。

 な、なんだこれは……。

 見えない。透の、姿が……。

 けれども。

 私のジェネシス復活と同時に再度具現化されていた《白夜月光》の白き満月が、かろうじて薄い光で世界を照らす。


 透の頭上には、黒き天使の輪が具現化されていた。


「人間の……本質は……悪だ。お前を殺し、その光の全てを……終わらせる。ジェネシスは、悪の、その為の、力なのだから」


「…………」


 人工天使サマエルのことなんて、考える暇もない。

 “今の透”はあまりにも、怖過ぎる……。

 やりあうだけ、精一杯かもしれない。

 でも……。


「――――負けない」


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