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±0  作者: 日向陽夏
第3章 黒へと至る少女【前】 運命之環編
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第15話 Clear≒White⑯【白雪セリカ(4周目)視点】


「お前は、いばら姫が水面下でコソコソと作っていた……僕への抑止力。人工知能の最終兵器か……」

「え、あ、はいどうも。透さん、でしたっけ?」

「ああ。彼女も意外と律儀なところがある……。《赤い羊》は解散したと言ったのにな……」

「まぁ、ママはちょっとツンデレなとこありますから~」

「そうか……。まぁいい。話はあとにしよう……。お前は3周目……倒れてる方の女を消せ。僕はもう片方を殺す。こいつらは僕にとっての禁忌を犯した……。もう、黒にするかどうでもいい……。僕も本気でやろう。殺そう……」

 透は顔を片手で覆い苦し気に顔を歪めたまま、指の隙間から覗く漆黒の目が冷たく私を見据えている。

 透からはもういつもの余裕の笑みが無い。声は不気味なほど静かで、それが今までとは異質の怖さを感じる。

 余裕の笑みは消え、能面のような冷たい顔。

 これが……本当の透……。

「了解っす。激おこトオさん、こわこわですね」

「面白くないよ、お前のユーモアは……。余計なこと以外は、黙ってろ……」

「あ、はい……」

 《赤い羊》の王としての仮面が割れた素顔の透は、また別の凄みがある……。

 尋常じゃないプレッシャーに呑まれそうになりかけるけど、それでも負けるわけにはいかない……っ。


(……“透明”が来た時点でもう勝ち目はない。逃げに徹しましょう)

 私が内心で覚悟を決め始めていると、3周目から驚くべき提案がされる。

 サマエルを名乗った少女を、3周目は透明と呼んでいるらしい。

(こいつと戦ったことがあるの?)

(私は無い。ただ、2周目が最後まで殺せなかった存在と聞いている。接敵した時点で逃げろと警告されている相手でもある。こいつの強さは尋常じゃない)

(そんなに……? で、でも逃げたとして透をここで殺せなきゃ……ここから先の未来はどうなるの?)

 第二の死亡フラグを放置したまま、その先の未来なんてあるのだろうか?

(……っ)

 3周目にとって、完全に予定外の出来事らしい。声にならない苦悶が伝わってくる。

(何か私たちに落ち度はあった? 『運命の環』が乱れるような出来事は……?)

(恐らくは結が裏切った……のかもしれない。もしくは致命的なミスか)

(え……?)


「と、しゅ、くうけん~!」


 全身に透明のジェネシスを身に纏ったサマエルが3周目の方へ飛び込みながら殴りかかっていく。3周目からの声は途絶え、冷たい殺気が正面から静かにやってくる。

 透から溢れているジェネシス量は、今まで見たことが無い程にあふれ出していた。

 マザーと同等か……いや、これは……僅かに上回っている……。


「シラユキセリカ……。お前は殺さなくちゃ駄目だ……。殺さないと……いけない……」


 《多重展開》――タジュウテンカイ――

 《千波万波》――センパバンパ――


 本当にさっきと同じ能力なのか?

 そう疑いたくなる程に、早く、そして容赦が無い一撃。威力が、勢いもジェネシス量も、質も、全てが桁違いだ。

 鼓膜を割くような風切り音が響き、風と風の摩擦で雷が煌めている。

 さっきまでの戦いは透にとっては遊びに近かったのだろう。それが今なら分かる。

 大量の黒き鎌鼬が竜巻のように暴れ狂いながら私へ放出される。

 《白雪之剣》の刃をぶつけて無効化させようとするも、鎌鼬の量が多過ぎて一つ一つ全てを消すことができない。

 内心の焦りで心臓が握り潰されるような悪寒を感じ、耳元で誰かが囁いたような気がした。


 ――――ずっと君を観察していたけど、《白雪之剣》には弱点がある。個々の無効化には強いけど、集合体の無効化には弱い。この子達一匹一匹を無効化することはできても、軍勢で攻められたら無効化できないんじゃないかっていう発想。


 かつて私の弱点を見抜いたリリーの言葉だった。

 私の破滅を願うかのように、リリーが残した言葉が呪いのように木霊して、私の心を軋ませた。


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